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2009/09/29 (Tue) No.14 月明かりのリリィ①

途中書きだったものを、根本的なところの設定を変えて始めてみました。
大分ザックリとしたものです。
「断片集」としてひとまず終えれたら、少し長くして書き直したいと思ってる物語です。



-断片集-
No.14 月明かりのリリィ①

夜空の中。
異様なほどに光り、存在を主張する月。
その下、町の中で、短い悲鳴が上がった。

一瞬の出来事。

それは、異形の存在が闊歩していた世の中では、さほど珍しいわけではない。

散り逝く女。
最期につぶやいた名前は、ひどく愛おしかったという。




くすぐったい。
ざらざらしているような、あまり味わったことのない感触が、おれの頬の上を往復する。
おれはまだ眠りの中に留まっていたくて、身体を捻って避けようとするが、ざらざらは追いかけるように動く。
何度も繰り返される感触が、おれを段々と在るべき世界へと引き連れていく。

「ぐ・・・うぅ・・・。」

鈍い呻きが喉を揺らした。
意識が脳の中に入ってきて、瞼がひとりでに開いていく。
背中と首に伝わる柔らかい、包むような感覚。
眠気を誘発する環境に抵抗しながら、体を少し起こす。

おれは、ベッドの上に寝かされていた。
近くでは暖炉に木がくべられ、暖かい空気を漂わせている。
それほど大きな部屋ではないが、壁に掛けられた数点の絵画や、おれを照らす少し控えめなシャンデリアに、この家が裕福な者の住処だとうかがえる。
不思議と気分の落ち着く夜の森の絵から目を離し、右手の方へと視線を移す。

灰色に染まった、雪を連想するような長い髪が、灯の淡い光に映えている。
そこには、洒落たイスに幼い少女が座っており、膝の上では小さな犬が尻尾を振っていた。

こいつが、おれの頬を舐めていたのか。
少女はというと、犬を軽く腕で包んだまま、静かな寝息をたてている。
なんとも微笑ましい、絵になる様子だが、明らかに目に付く部分が。
少女の目の部分を覆い隠すように、包帯がぐるぐるに巻かれている。

月明かり、だろうか。

「スー。・・・スー・・・。」

少女は、規則正しく寝息を並べ、起きる様子は全くない。

どういった経緯で、おれはここで寝ているのかは理解できなかったが、何か悪いことをされたわけでもないようだ。

目覚めたことを報告しようと、少女を起こそうとしたが、すぐに止める。
触れてはいけない気がした。
可憐で、小さい、ガラス細工のような少女。
見つめるだけで、ピシッとひびが入ってしまうのではないだろうか。

そんなことも思ったが、もっと、おれがこの娘に近付いていけないような理由があるような気がした。

出来るだけ音をたてないように、ベッドを抜ける。
頭をこくこくと揺らす少女の横を通り、扉に手をかける。
キィッと古びた木の軋む音と共に、とてつもなく長い廊下が視界に入ってきた。
先ほど裕福な者の家だと感じたが、これは家ではない、巨大な屋敷だ。
暗闇の中、あまり灯がないのもあって、終わりである突き当たりが見えない。

「・・・すごいな。」

呆然とする内に、勝手に感嘆の言葉が洩れた。

とりあえず誰か屋敷の者を捜そう。
礼だけを速やかに伝えて、この屋敷から去ろう。

約束があった。
何かを買い与えてやるという約束。
とても大事なことなのだけれど、上手く思い出せない。
頭がぼんやりしているからだろうか。

とにかく、今は誰かを探さないと。

そう思って歩き出そうとした瞬間、足元に気配を感じる。
今出てきた部屋の扉の横には灯りがあったので、暗闇の中でもそれがなんなのかハッキリと分かった。
とてとてと、おれの周りを歩いているのは、おれの頬を舐めていた犬だった。
おれを好いてくれているのか。

「おまえも一緒に来てくれるか、犬。」

答えるように少し跳ねた様子が可愛らしく、笑みがこぼれた。


少しずつ廊下を進む。
おれが寝かされていたのと同じくらいの大きさの部屋がいくつもあるようだ。

ただ、どの部屋からも気配は感じられず、異様な印象を受ける。
あまりの広さとあまりの静けさに、言い様のない不気味な感覚が足元から登ってきた。

なんなのだ、この屋敷は。

不審に思いながらも、暗闇の中を進んでいると、横を歩いていた犬が突然走り出した。

「おい、まて。」

咄嗟に声をかけたが、お構いなしに犬は走っていく。
暗闇の向こうにまぎれるギリギリの範囲に姿を認めつつ、おれは犬を追い駆ける。

はっ。はっ。はっ。は。

喉が痛いくらいに渇いている。
息もすぐに上がり、肩が浮いてしまっている。
急に動いたからだろうか。
頭もひどく痛む。
視界は霞がかかって揺れてばかりいる。

限界がすぐそこまで来たとき、犬がサッと角を曲がった。
続いておれも息を吐きながら角を曲がる。
瞬間、目の前に暗闇よりも暗い黒が広がる。
気付いたときにはおれはそれにぶつかっていて、目の前の黒と一緒に倒れこんでしまった。

「いててて・・・」

情けない声をあげながら、前に目をやる。
そこには、漆黒のドレスに身を包んだ女が尻餅をついている姿があった。
手には洒落たランプがしっかりと握り締められていて、その光が下から女の姿を照らして妙に艶かしい。

女の傍らでは先ほどの犬が嬉しそうに尻尾を振っている。
ハッハと息を吐き、餌をせがんでいるようにも見える。

「・・・・・・起きたのか。」

か細い、暗闇に吸い込まれそうな声が廊下に響いた。
少し経って、それが俺に向けてかけられた言葉だと気付く。

「あ、ああ。
 ・・・・・。
 あ。すまない、ぶつかってしまって。ケガはないか。」
 
そう言って手を差し出すと、無表情のままおれの手をとって体勢を整える女。
軽く手でドレスをはたき、汚れを落とそうとしている。
しかし、不思議なくらい廊下には塵一つなく、服が汚れている様子は全くなかった。

「食事の用意が出来た。リリィと一緒に食べよう。
 ついてこい。」

淡々と話す女。
リリィとは人名であろう。先ほどの少女の名であろうか。それともこの女の名だろうか。

不思議と身体は少し楽になっていた。
限界に近いことに変わりはないが、飯というのがそんなに嬉しかったのだろうか。

時折離れていきそうになる意識を懸命に繋ぎとめながら、細い背中を追い続けた。




これからなにかパーティーでも起こるのではないかと思うほど広い部屋。

その中心に置かれた、不必要としか思えない長さを誇るテーブルに、全員一角に集中して座っているという奇妙な構図。
おれは渡された、新品にしか見えないスーツに着られながら、緊張して座っていた。
目の前には、先ほどのドレスの女。
おれの隣では犬がイスの上で尻尾を振り回し、その向かい側では、少女が機嫌よさそうに鼻歌を奏でている。
テーブルの上には、大量の料理が並べられていた。。
それの殆んどが、肉であった。女2人と犬1匹では不釣合いすぎる組み合わせだ。
ここは男のおれをもてなしてくれているのだと、そう解釈しよう。

「いただきましょう。」

ドレスの女のか細い声が、耳をくすぐるように響く。

「いただきます!」「わん!」

それに合わせて、少女が続き、犬が短くほえる。
おれは一瞬戸惑ってしまって、少し遅れてしまった。

「い、いただきます。」

この食事の席に着くまでが体力的にやっとだったので、ほとんどまだ会話はしていない。
故に、彼女らがどういった人物なのかも分からない。
おれはこの後とてつもなくひどい目に合わされるのかもしれない。
こんなに恵まれた展開など、そうそう信用していいものではないから。

と、そこまで一通りの心配をしてみてから、食事を始める。
心の何処かでは、何故だかわからないが彼女らをすっかり信頼してしまっている。
以前どこかで知り合ったことでもあるのではないかというくらい。

肉に手を伸ばす。
食べやすい形に切る。
口に入れる。
咀嚼。咀嚼。咀嚼。
飲み込む。

「・・・おいしい。」

思わず口から出てしまった。

「でしょっ!ユリアの作る料理はなんでもすっごくおいしいんだよ!」

元気な声で、こちらへと話しかけてくる少女。
目は、包帯が覆ったまま。

「行儀はよくしないと。リリィ。」

ユリアと呼ばれた女性が、一切れの肉を少女へと食べさせようとしていた途中に、勢いよく乗り出したものだから、少し怒った様子で言う。

「一人でも食べられるよ。フォーク貸して。」

「また汚すだけ。大丈夫。世話はユリアがやる。」

ユリアはそう言って口元へと肉を持っていく。
なんとなく迫ってくるものを感じたのか、リリィは口をあーんと開ける。

口の中に入れば、結局は何も文句を言わず、おいしそうにもぐもぐと動かす様子は可愛らしい。

リリィは十歳といったところだろうか。
さらさらと揺れる銀と灰の髪は美しく、時折無性に愛しく感じる。

ユリアは背丈がおれと同じほどで、齢は二十ほどであると思われる。
口数が少なかったり、会話の中で自分を名前で表したりと、どことなく幼い印象も受ける。

二人を交互に眺めていると、リリィがまたこちらへ身を乗り出した。

「そういえば、お兄ちゃんの名前は?」

訊かれて、少し驚く。
目は塞がれているというのに、おれがそう年をくっていないことが分かるのか。
はっきりと話す彼女なので、お世辞とは考えにくい。
何か不自由していると、他の感覚が研ぎ澄まされたりするということだろうか。

一通り考えていると、自分で疑問に思うところがあった。
年齢。自分は、いくつくらいだったか。
いまだに頭がぼんやりとして、霞がかかっているような感じだ。

「おれは、キアラだ。キアラ。」

キアラ。
ずっと思い出せずにいたが、訊かれればすぐに口から出てくる。
疲れているだけかもしれない。

二人を伺うと、少し驚いた様子だ。
何かまずいことを口走ってしまったのかと、少し不安になる。

ほんの少し間をおいてから、リリィが明るく言った。

「キアラって、わたしのお母さんと同じ名前だよ!
 びっくりしちゃった。」

母親。
ユリアではないのか。
なんとなく二人の間に流れる空気は、親子より友人関係のものであったから薄々気付いていたが、ならば本当の母親は何処に。

「女性と同じというのは、少し複雑な感じだな。
 ・・・。その母親は、今何処に?」

訊かなくてもよいことであるのに、つい口に出してしまった。

「お花。」

「・・・え?」

ぼそりとリリィが言ったが、上手く聞き取れなかった。

「リリィに、お花を買ってきてくれるはずだったの。
 だけど、急に用事が出来て、帰ってこれないんだ。
 それまで、リリィは良い子にしてないと駄目なんだって。」

少し寂しそうに言って、最後はユリアに顔を向けて頬をぷくりと膨らませていた。




ちょっと荒い感じ(描写少なめ)で載せちゃってますが、これが一番ネタ帳として正しいのではないでしょうか。笑
ダーク成分多めになる予感。
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comment











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うおおお続きが気になるのなんの...!
お母さんの記憶が男の人の中に入り込んでるのでしょうかねー...?推理ものは苦手で全くあたらないので無駄なことはしないでおとなしく続きを待ちますww
あとあと犬がすっごい可愛いです人より動物好きなので異常に萌えてましたすみませんwwww

2009/09/29 21:31 | コウ [ 編集 ]


 

>コウさん
ちょwコウさん 大体合ってるw
あんまり隠す気もなかったですが(強がり
後半の展開、頑張っていきたいです!
犬は飼ったこと無いので完璧な妄想でありますが、じゃんじゃん萌えてやってください。笑

2009/09/30 00:02 | 黒目 [ 編集 ]


 

おぉ!!先がものすごく気になる展開!!

これが以前お話しして下さった「盲目の少女」が登場するお話ですね。
いろいろ想像していたのですが、ゴシックファンタジーという雰囲気でとても面白いです!

やはり黒目さんは書けるジャンルが広いですねb
連載小説とともに続き楽しみにしています!

2009/09/30 19:24 | ツーヨン [ 編集 ]


 

>ツーヨンさん
感想ありがとですー♪
西洋な感じのものはまだ書いたことがなかったので挑戦中です!
名前なんか思いつきで一気に決めてしまいましたが、結構気に入っております。笑

近いうちにさらっと完結させます。
もしかしたら②で終わりかもです。

2009/10/02 01:17 | 黒目 [ 編集 ]


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