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2009/08/22 (Sat) 【FILE1】甲村陽一の場合①

新しく小説を載せていきたいと思います。
「断片集」の「No.2 口径 is 9mm」がもとになっているので、読んでいない方は是非。
「口径 is 9mm」は、ブログ記事を書くときに、その場で思いついた物語をそのままうちこんでいったもので、黒目自身も着地地点が見えず、書いていて非常に楽しめました。
(他に、「No.7 落下流水」、「No.11 花火、散ル」なんかも同じように)
普段の拙い文章よりさらに粗の目立つ作品なのですが、素材自体は面白いのではないかと思い、少し長めの物語として書くことにしました。

今回は、文章の綴り方を今までと変えてみたりと、微妙なチャレンジもあるため、見苦しいかもしれませんが、どうかお付き合いの程宜しくお願いします!





【FILE1】 甲村陽一の場合 ~ふぁいるいち こうむらよういちのばあい~

甲村陽一は悩んでいた。
今年から憧れのキャンパスライフとなり、充実した毎日を過ごしてきた彼であったが、中々に面倒な立場に追いやられていた。
大学というものは、専門的な分野へと身を乗り出していくものだから、同じ趣向を持つ人物と巡りあう事も多いであろう。
甲村は、大学へ入ってすぐに、『笹原理沙(ささはら りさ)』、『園田慶太(そのだ けいた)』という同級生二人と親交を深めることとなった。

きっかけはというと、軽い気持ちで参加したサークル内であった。
映画の研究という名目で活動しているようであったが、その実際は交流が中心といったもので、特別に知識を必要とされることはなかった。
甲村は、勉強以外でひたすらに打ち込みたいと思えるものもなかったため、随分と居心地がよく気に入ってしまっていた。

そんなごく普通な彼が、どんな面倒を目の前に溜息を漏らしているかというと、まさにこの同級生二人に関してであった。
二人とも、一定の地域から単身初めて飛び出したときの、いいようのない不安感を共有し、解消していった間柄であり、簡単には声に出すことには気が引けるとしても、「親友」と表現して問題はないだろう。

しかし、だからこそ今回はそういった関係が裏目にでてしまった。
現在甲村を悩ませている面倒というのは、所謂『恋愛』のことであったのである。

新しい空気に馴染むのに必死で、『光のように』と言っても語弊など引き起こすことがないと断言できるほどに速く、あっさりと春が終わりを告げた。
例年よりも随分と気温が高く、まるで体の一部であるように、大学配布の団扇を働かせていた、初夏のこと。

甲村の携帯電話に、なにも飾られず、ただ簡潔に「相談がある」とだけ書かれたメールが届いた。
白い画面にその一言だけが浮かぶ様子は、不気味なくらいに静かであったが、その簡潔さが逆に相手の緊迫した状況を主張しているようにも感じられた。

メールを寄越した相手は、園田慶太であった。
最初は真面目にと取り繕っていた甲村よりも、『素』の実直さで上回るほど、大人びた人物である。
それに加えて、盛り上げどころではしっかりと波調を合わせることもできるため、人当たりが非常に良い。

少しばかり焦りすぎて、待ち合わせの喫茶店に早く到着していた甲村に対して、園田は開口一番、

「俺は笹原理沙に惚れてしまった。」

などと口走った。

甲村は、園田は自分より優れていると常々思っていたものだから、頼られたことに得意気になっていて、少々ポーズなども決めてコーヒーを啜っていた。
そんなことをしている所へ、急に心の内を告白され、しかもそれがあまりに意外なものであったので、甲村は漫画のように、焦げた液体を卓上へと吹き散らしてしまった。

ごほごほと咳き込んでいる間に、園田は甲村の向かいに腰を落ち着かせ、上目がちに真剣な顔を覗かせた。

「甲村は、どう思う?」

甲村の様子が静まるのを見計らって、園田が言った。

「どう思うって・・・。笹原?」

鼻にでも流れ込んだのであろう、甲村がナプキンを顔の前で広げ、しかめっ面をしながら返す。

「今、俺が笹原理沙以外のことを話題に上げたか?」

「いや、『笹原理沙に惚れた』としか聞いていないけどな・・・」

甲村は、うーむ。と、わざとらしく唸ってみせる。
頭の中では、毎日のように顔を合わせる女子の様子を鮮明に描き出す。

笹原理沙。
非常に明るく、竹を割ったような性格の持ち主で、話し相手を爽快な気分にさせる人物である。
容姿は一般に比べて、飛びぬけているというほどではないにしろ、美人と呼べるであろう。
この三人グループの中では、一番行動力があり、男二人を差し置いてリーダーのようでもあった。

「確かに、笹原は美人だ。性格はさらに美人だな。
 だけどな・・・」

甲村は、思ったことをそのまま口にした。
続きを少し濁らせると、園田はずいっと身を乗り出す。

「だけど、なんなんだ?」

たまらず声に出した園田に、甲村は苦い笑みを作りながら言った。

「園田、お前は必ず尻に敷かれるぞ。」



現在の自分の住処へと還って、甲村はふぅと息をつく。
そこで、携帯電話が突然振動を起こし、その存在をアピールする。
体の力を抜いた瞬間に鳴るものだから、甲村は驚きとびはねてしまった。

情けない行動をしてしまった恥ずかしさからか、見られていたはずなどないのに、甲村はきょろきょろと周りを見渡す。
そうして少し経つと、古びたソファへと腰を下ろし、今度こそはと深く息を吐いた。

ジーンズのポケットから携帯電話を取り出し、広げる。
長い日が暗闇を帯びるほどの時間であったから、小さな液晶が孤島のように寂しく浮かぶ。

届いていたメールを開くと、絵文字の手が見える。
まるで孤島に流れ着いた人が、必死に助けを求めているようだと、甲村は思った。

メールの内容はというと、絵文字などで飾られてはいるが、その旨は今日園田から受け取ったものと同じだった。
差出人は、笹原理沙。
そこには手を合わせてお願いしている様子や、水色の汗によって困っている様子が中々に凝って表現されていたが、結局は「相談がある」とのことだ。
偶然にも、待ち合わせ場所は今日園田と会った喫茶店であった。
よく三人であそこに出かけたりもするから、不思議なことではなかったが。
逆に、どちらか一人と行く場合の方が少ないというのに、二日続けてとは、妙なこともあるものだ。
そうは言うものの、笹原の場合は何か好きなものをおごると書いてあった。
それほど裕福ではない身分、喜んで引き受けようではないか。

そんなことを考えながら、甲村は部屋の電気を灯し、テレビを点ける。
視線は光を放つ箱へと向けながらも、頭の中では今日あったことを思い返していた。



甲村が思ったままのことを口にした後、園田の意外な一面を知ることになった。
とにかく、園田は恋愛に関して疎かったのである。
聞けば、今までまともな交際はしたことがなく、好きだと実感したのも今回が初めてだという。

それを聞いた甲村は、親友の頼みであるということに加え、園田をリードできる分野を見つけることができた喜びで、随分と興奮していた。
終いには、徐に携帯電話を取り出して、

「こういうのは先手必勝というものだよ。」

と調子に乗る始末であった。
しかし、そこで園田があまりにも顔を上気させて、もしかしたら涙までをも浮かべて、拒否するものだから、甲村の悪戯もそれまでとなった。

「しかし、相談を持ちかけてきたときの態度とは随分と変わるものだな。」

からかって甲村が言った。

「うるさいな。本当に、どうしたらいいのかわからんのだ。」

「だから、さっさと『好き』って言ってしまえばいいのだよ。」

そう言って携帯電話のアドレス帳を開いて園田に押し付ける甲村。

「・・・・・・!!」

そんなことをするとまた園田が顔を赤らめて騒いだ。

結局、この日は最後まで甲村が園田をからかって終わった。




「まさか、明日は笹原とあそこに行くことになるとはな。」

時々じじっとしたノイズが入る放送の音を聞き流しながら、独り言を呟く。

明日会ったら園田のことをさりげなく教えてやろうかとも思ったが、流石にそこまでいくと愚行である。
それに加えて、今日の別れ際に、

「俺と甲村だけの秘密だからな。絶対に喋らないでくれよ。」

と念を押されていたのである。
とことん奥手というものであった。


翌日。
あの喫茶店の中で、一番腹に溜まりそうなメニューはなんであったろうなどと考えながら、甲村は昼下がりの陽光の中を歩いた。
やはりこの日も気温が高く、喫茶店に向かうまでの短い道のりでさえ、額にじわりと汗が滲むほどであった。

この時期は『楽園』とさえ思える、冷房によって作り出された快適な空間へと通じる扉を、汗ばんだ手で開く。
甲村の姿が現れたことに気がついたのか、笹原がおーいと声をあげる。

笹原が陣取っていた席は昨日のそれと全く同じであった。
偶然とは重なるものだと思いながら、甲村は笹原の向かいに腰を落ち着ける。

「笹原と二人っきりっていうのは、珍しいな。」

少しからかうつもりで甲村は言う。

「うん。そうだね。でも、これは陽一にしか相談できないことだし。」

笹原は、少し顔を赤らめて返す。
親しくなり始めてすぐに、笹原は甲村のことを下の名で呼ぶようになった。
甲村は、特に理由があったわけではないが、下の名で呼ばれる機会があまりなかったため、変な気分になったものだった。
だが、それよりも変だったのは、笹原は甲村を「陽一」と呼ぶというのに、園田に対しては「園田君」のままだったのである。

それは園田自身気にしているところで、昨日の会話の中でも、

「俺より甲村のほうに興味があるのではないか」

とか、

「近寄り難く思われているのではないか」

とか、いろいろと思案しているようだった。



あれこれ思い返していると、店に入り際に頼んでおいたコーヒーが、テーブルへと運ばれてきた。

甲村がそれを昨日のように、少し得意気なポーズで啜っていると、笹原が何か言ったようだった。
普段快活な笹原にしては、随分と口の中で篭るような発音で、何かそわそわしているようでもある。

「悪い。聞こえなかった。
 隠さんでいいから、もう一度言ってみてくれよ。」

甲村はどことなく上からの目線で言って、もう一度コーヒーを啜る。
そうすると、今度ははっきりと、しっかりと耳へと届く声で、笹原が言った。

「私さあ、園田君に惚れてしまった。」

なんということであろうか。
甲村は、昨日と全く同じ動きで、コーヒーを卓上へと散らした。
昨日とは逆側に座っているという違いはあったが、あまりにも目立つその行動に、店員は怪訝な表情を露骨に甲村へと送った。

ごほごほと咳き込む甲村が静まるのを待って、笹原が口を開こうとしたとき。
甲村は笹原の発言を手で制して、先にこう言った。

「笹原は、必ず園田を尻に敷くだろう。」




昨日と同じ帰路を辿って、住処へと還る。
あれからいろいろと話を聞いたり、適当に流しながらおごりであるハンバーグのセットにがっついたりして、夜を迎えた。

未だに胃の中に残る、肉やらポテトやらで、少々腹が張っているので、ソファで横になる。
甲村は、さっきまで話していた笹原の様子を思い浮かべる。


園田とは違い、笹原はそれなりに恋愛の経験値があるらしく、昨日のように甲村がからかうことはあまりなかった。
しかし、話の中で笹原は園田を「初めて本気で好きになった人」だと表現した。
甲村が、

「今までは好きでもない男と付き合ってきたのか」

と聞くと、

「大学に入ってからは、将来も視野に入ってくるの」

だと、訳のわからないことを答えとして渡した。
変に意地になった甲村は、女というものはそんなにドライなものなのかという疑問もぶつけてみたが、さらによく分からない理屈で塗り固められたものだから、話の途中で記憶が離脱した。

それならばと、甲村は園田が気にしていたことを質問した。

「なんで俺に対しては『陽一』なのに、園田に対しては『園田君』?」

近しい人物に下の名が『けいた』の人がいて呼びづらいとか、そんな安易な答えを期待した甲村であったが、

「恥ずかしくて名前で呼べない」

などと、笹原は顔を上気させて言った。
今度は食べかけのポテトを喉につまらせそうになった甲村であったが、なんとかそれを乗り切り、笹原の様子を伺う。

冗談などではなく、いたって真面目な顔をしている。
誰に対してもすぐに馴染んでしまう彼女が、ここまで恥らうとは。
甲村はただ意外だと思って、話の受け手にまわった。

それからは笹原から園田の良いところだのを延々と聞かされることになった。
あの紳士的な園田が、特別な意識を持って笹原に応対しているのだから、笹原が「もの凄く親切」というのを園田の良いところとして挙げるのは当然のことであった。

そんな笹原であったが、去り際に、

「このことは私と陽一の秘密だからね。絶対に喋っては駄目」

と、甲村へ言った。
さて、昨日同じような釘を刺されたと思いながら、甲村は

「伝えないとなにも始まらないだろう」

と笹原に提案してみた。すると、

「今回は本当に慎重にいかないと駄目なの。園田君、私に対して『友達』意識強いだろうし」

甲村は、なにやら面倒なことになってきたと感じながらも、結局は頷いて、こうして還ってきた。





もの凄く中途半端ですが、今回はとりあえずここまでで。
甲村の話はほとんど書き終わっているのですが、更新ペースをできるだけ乱したくなかったので、こんなとこで切ってしまいました。
これでもどこで切るか悩んだのですが。汗
まだ評価など出来ない状態だと思われますが、なにか思うところがあればコメントをいただけると嬉しいです!
次の更新は火曜日か、水曜日に。(もの凄く稀ですが、予定が前倒しになる可能性も)




【次回キーワード】
揺らぐ 亀裂 あのお方登場 終了

ツーヨンさんの次回予告を真似させていただきました。笑
あんまり上手いことできませんでしたが・・・。

それでは。次は 【FILE1】甲村陽一の場合② です。少しだけお楽しみにっ。

悲劇のルーツ。
「No.2 口径 is 9mm」

 NEXT→
【FILE1】甲村陽一の場合②
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続き気になるー☆
3人の間柄がすごく緻密に描かれてる気がするi-234

見てて伝わる良さっていいよね
頭に思い浮かばされる☆

続き期待して待ってます^^

2009/08/23 14:18 | ゆうと [ 編集 ]


 

ありがとうございましたー!

すごく文章に引き込まれました。

この夏休みの短期間に黒目さんの感覚がさらに研ぎ澄まされたことを感じます。

堅い文面が逆に想像力を掻きたて、彼らの心情や生活空間が、確固とした感情・映像になって思い浮かびました。面白かったです。
続きがとても楽しみです!!

>【次回キーワード】
揺らぐ 亀裂 あのお方登場 終了

おぉ!真似されちゃったんだぜ(*^ ^*)(照)
どれも気になりますが・・・
「あのお方登場」「終了」!?
ウーン気になる・・・!!

2009/08/23 19:15 | ツーヨン [ 編集 ]


 

>ゆうと
感想ありがとう!!
結構視点が曖昧な気がして、不安だったんだけど、なんとか伝えることが出来たみたいでよかった。
頑張って続き書いてくで、見守っていてくれい。
ゆうとの小説も楽しみにしてるよー!!

>ツーヨンさん
こちらこそ読んでいただいてありがとうございます!

>この夏休みの短期間に黒目さんの感覚がさらに研ぎ澄まされたことを感じます。

おぉ!なんか凄いこと言われちったんだぜ。
もの凄い不調の中、必死に脳内から引きずり出してきた文章たちなので、めちゃくちゃ嬉しいです!!
もっと綺麗に鋭く表現できるよう、これからも精進したいと思います。

次回予告はまんまパクってしまいました。笑
無断で。申し訳ないっ。
考えるのが楽しいので、次回も使わせていただきますね~!

2009/08/23 20:51 | 黒目 [ 編集 ]


 

>次回予告はまんまパクってしまいました。笑
無断で。申し訳ないっ。

全然いいっすよ~(^^)b
なんか面白いところがあったら、自分ごときでよければじゃんじゃん使ってください!

2009/08/24 19:11 | ツーヨン [ 編集 ]


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