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2009/07/14 (Tue) No.8 Time


-断片集-
No.8 Time

ピピピピピッ。
いつものように、枕元に置かれた時計は、自らの仕事を全うしようと声をあげる。
それをこれまたいつもと同じタイミングで止め、起き上がってくるあなた。
私はいつもあなたより先に起きて、ごく普通の家事に取り掛かっているのだけれど、私自身が起こそうとしても、あなたは起きたことがない。
まあ、私が贈った目覚まし時計のみを頼りにしてくれているというのだから別にいいのだけれど。

あなたは、とても小まめで、繊細で、変な人。
会社へと向かう電車にぎりぎりで乗れるように朝のスケジュールを組んでいるあなた。
毎日数十秒単位というわずかなズレしか生じないあなたの行動には、とてもではないけれど干渉することができない。

けれど、あなたは知っているの?
私がこうして毎日あなたの為に朝食からスーツまで全て準備をしているからこそ、あなたのそのスケジュールが完成へと至っていることに。
その前の晩には、翌朝に備えての家事を私が行っているからこそ、あなたのそのぎりぎりが罷り通っていることに。

こんなこと、絶対に言うことはできない。

こんなことを口走ること自体おかしなことなのだ。

いつからか知らないけれど、女は家の中でそういう働きをする機関なのだと、語り継がれてきたシステムを信じる人がいまだにいるだろうから。

それでも、あなたとの間にはアイがあるから。

だから、私はこうしてあなたに尽くしている。



・・・ある日、大喧嘩をした。
喧嘩の過程で、既になんのことで対立していたかも忘れるほどの大喧嘩。
きっと、不安だったから。
あなたは本当に私をアイしてくれているのか不安でしょうがなかったから。


泣きじゃくり、ヒステリックになる私。

とうとう私の口から、前に考えていた言葉がこぼれてしまった。

私がいないと。私がいないとあなたは生きていられないでしょう?

朝はどうするの?

夜はどうするの?

傍にいるのはあの目覚まし時計だけで、あなたはどう生きていくの?

次々と投げかける私に流石にまいったのか、あなたは謝り、優しく抱きしめてくれた。
でも、私を見るあなたの瞳は、家具のそれを見るような、無機質で渇いた色をしていた。

それからの一年は、とても優しいような生活が続いた。

私が役割を果たし、あなたは私を必要とする。

それこそがアイの全てであり、あなたからのアイの証拠だと私は認識するようにした。

今日もあなたは変わらず、目覚まし時計の音を頼りに目覚める。

けれど、あなたは知っているの?

私は知っている。

本当は、あなたが私を愛していないことを。

せめてもの戒めにと、使い続けているその時計でないと起きられなくなってしまったことを。

そして、その古びた時計は、一日が終わりを告げる頃には、5分のズレが生じるようになってしまったことを。

あなたがぎりぎりの時間に家を出た後、決まって私は時計を調節しにいく。

愛おしそうにネジを回すこの顔は、きっとアイに満ちている。

私と離れたとき、あなたもきっとアイに気付く。

ネジを巻く音が無機質に響く。

カチカチ、カリカリ、カチカチ。

そうしてまた、あなたとの日常が流れていく。

END



これはちょっと前に書いたけど、慣れないジャンルに手を出してかなり納得できないものだったので、ずっとお蔵入りしておりました。
それでも載せたのは、ホントに今更新できるようなものがないので・・・
スランプ?です。とにかく書けない。文章が書けない。

頭の中では沢山浮かぶのに・・・書き出すと急に止まる。汗
今短編を超スローペースで書いてますが、いつになったら載るのか・・・

今回の断片集では、変な愛の形とちょっぴりホラー気味を目指しました。
さあやさんの提案を元に書いたものです。
元々ショートで繋いでこうという計画だったのが、あまりの力量不足で挫折。
悔しいです。いずれかリベンジを。

コメントで少しはエネルギー沸くかもなんでよろしくお願いします。笑
Harmonicsも更新できるようになんとか頑張ります。それでは。

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おひさ~!
作品、ありがとうございました。
お疲れ様でした。

うーん、せつないです。でもそのせつなさが素敵です。

こう、最短の言葉で多くの意味を含ませようとした苦労の痕跡をひしひしと感じます。

やはり、黒目さんは日常風景の表現が素晴らしいです。
パシッと青年や女性の生活が目の前に浮かびました。

時計を通した女性の目線とか、男性の無機質で乾いた目で見ているっていうのが特に印象に残ります。

アイがカタカナなのは、すれ違いや、慣れ合いで心が通じ合わないっていうことでしょうか。

じっと時計を通して見つめているってのはこれはある意味ホラーですね;。
とても面白かったです!

2009/07/21 21:34 | ツーヨン [ 編集 ]


 

>ツーヨンさん、おひさ~~!
感想ありがとうございます!!
ちょっぴり背伸びをして、オトナな物語を描こうとしたので、自分でもあまりしっくりこない短編です。
長さは全然なのに、すっごく書くのに時間がかかった記憶があります。

>やはり、黒目さんは日常風景の表現が素晴らしいです。

おぉ。なんと嬉しいお言葉!
基本的にどれもヤマ場入る前の普通の描写にやたらと時間を注いでしまうのですが、それで日常が少しでも上手く表現できていたのなら、少し自信になります。
ありがとうございます!

アイに関する解釈はほぼその通りで合ってます。
一度だけ漢字の愛が登場するのですが、「アイ」と「愛」は作中では別なものということになってます。
こればっかりは勝手に自分で決め付けてます。

感想、本当にありがとうございました。
これからも更新頑張っていきますので、よろしくです!

2009/07/21 22:33 | 黒目 [ 編集 ]


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