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2010/12/02 (Thu) No.23 meltdown

-断片集-
No.23 meltdown

カタカタと、細かい振動が僕の身体を伝う。

つり革にかけた右手の指が、長時間の負荷で真っ赤になっている。そろそろ持ちかえてもいい頃合だ。

身体を少し捻って、隣の座席を見る。

君は無防備な寝顔を晒しながら、ゆったりとした寝息を漏らしている。



『世界が溶けている』

最初にこう表現したのは誰だろう。

テレビで見た専門家か、通っている大学の教授か、ネット上の一般人か。

よく覚えていないけれど、とにかく何処かで見た。世界は、溶けていると。



太陽の下で置いてけぼりにされたアイスクリームのように、ドロドロと溶けていく訳ではないらしい。

ある大きな事故のせいで、生物が住むことのできない場所が出来た。そしてそれは徐々に拡大している。

そんな状態を表現したというのだ。


僕たちは、東に向かっている。

僕たち以外にも、沢山の人があてもなく旅している。ただただ溶け行く世界から離れたくて。


父さんと母さんは、僕の言うことを何も理解してくれなかった。

いずれ誰かが止めてくれる。だから心配はいらない。

そう言って、全く変わらない日常を垂れ流すだけだった。

多くの人は、僕の両親と同じ意志を示したのだろう。

大きな変化もなく周り続ける社会が、それを物語っていた。


だから僕は飛び出した。

いずれ蝕まれる日常に留まること。それは死ぬことと同意義な気がしたから。


だから僕は君を攫った。

大好きだった君を、そんな灰色の空間に閉じ込めておきたくなかったから。



ほんの数週間前に別れを告げた男が、恐ろしい形相でドアを叩いている。

そんな状況で、よく君は話を聞く気になってくれたと思う。

最初は冗談だと思っていたのだろう。

聞いているときの半分は怒っていて、半分は苦笑いを浮かべているだけだった。


今思えば相当に粘着質だったとは思うけれど、僕は何度も君を説得した。

最後の決心の要素の一つに、お父さんと大喧嘩中ということが含まれていたのが、少し腑に落ちないけれど。


ちょっと長めの家出のつもりで君は攫われてくれたのだろうか。

それとも、一度は離れてしまった僕との関係を取り戻そうとしてくれているのだろうか。


窓からさす夕陽を顔全体に浴びて、眩しそうに身体を捩じらせる君。

何の夢を見ているのか、僕には分からない。


そろそろ右手が限界だ。

つり革を左手に持ち替えて、感覚の鈍った右手で、君の頬をなでる。

君の表情が、少し優しくなった気がした。



行けるところまでは行こう。

普段見ている路線図の、ずっと先。

運賃なんか知りもしない、初めての街。

降りたら次を考えよう。無計画なこの旅を、君の性格ではむしろ楽しんでくれるかもしれない。


溶け続ける世界に取り残された僕たち。


最後の地では何を見ることになるのか。

そんな想像はまだしなくて良いだろう。


今は君を連れて、ひたすらに進むだけ。

旅はまだ、始まったばかりだ。




さて、お久しぶりの作品投稿となりました。
設定自体はものすごくわくわくしながら書けました。
しかし練れない。悩んだ挙句設定のみで突き進んだ感じです。笑
物語としては成立していませんが、これからいろいろ広がりを考えられそうで気に入ってます。
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comment











管理人のみ閲覧OK


 

おかえりなさいいいいいい!!
すごーーーく、待っておりましたよ*^^*

やはり、黒目さんの文体が好きです。
読みやすくて、響く。

これからも、楽しみにしています☆

2010/12/02 01:13 | 春 [ 編集 ]


 

>春さん

ただいまですーー!!!
春さんにまたコメントをいただけてものすごく嬉しいです!

僕の文を「好き」と言ってくださる方がいるのに、なぜいままで更新しなかったのかと。自分を叱りたくなります。

これから、改めて頑張ります。書きます。

まったり更新なのは相変わらずだと思いますが、よろしくおねがいしますね!

2010/12/02 01:21 | 黒目 [ 編集 ]


 

復帰第一弾、読ませていただきました。

『溶けていく世界』この世界についてもっと知りたくなってしまう作品ですね!
黒目さんのコメントにあるように広がっていきそうな物語だと思うので、よければ続きをお願いします笑

2010/12/11 22:35 | ホチ [ 編集 ]


 

>ホチさん
コメントありがとうございますっ!!
設定自体は本当に好きで、広がりも持てると思うのですが、長編を書ける気がしないという。笑
登場人物たちもはっきりさせて。いつかひとつの作品として成立させれたらいいなと思います。

2010/12/11 22:40 | 黒目 [ 編集 ]


 

お久です!
詩のように短い文体なので、主人公の感情がダイレクトに入ってきて、とても引き込まれました。

『世界は、溶けている』っていう言葉と、その設定がすごく惹かれます。朽ちていくとか壊れていくっていうのとはまた違う、響きの不思議さがすごく良いですね。

2人はどうなるのでしょうか・・・?

2011/01/14 21:41 | ツーヨン [ 編集 ]


 

>ツーヨンさん
ツーヨンさんだああああ!!!!お久しぶりです!またこうしてコメントしていただけるなんて、感激ですっ!!
半年ぶりくらいですねっ^^

苦し紛れに出していった文章なのでかなり短い作品となっておりますw
タイトルと設定は本当に気に入っているので、いつか長編として書きたいです。
もう少し幻想的というか、非現実的な景色を描きたかったのですが、それはまたいつか。笑
二人の結末を描けるよう頑張りますっ

2011/01/15 13:51 | 黒目 [ 編集 ]


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