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2010/03/18 (Thu) No.19 汚い救世主

-断片集-
No.19 汚い救世主

頭をぼりぼりと掻いたら、長い髪から細かい埃がぱらぱらと舞った。
小刻みに揺れる小さな照明に照らされて、いやでも目に映りこんでくる。

くぁぁっと欠伸をしながら、最後の水を飲み干した。
いよいよ無くなってしまった。

供給されなくなってから、どれくらいだろう?
確か、どんな状況でも最低三年は生存できるよう備えてあった筈であるから、それくらい経つのだろう。

いつかこの時が来ると知っていながら、私はただ時間が過ぎ行くのを眺めていた。

生への執着などなかった。
生かされるままに生かされ、生かされないのならそのままに流されたいと思った。

それは生きているとは言えないのではないか。
あの男は言った。

お前は死にながら生きていき、死んでもなお生きながらえていくと。

ただの言葉遊び。
私の時間など、ここに入れられる以前から止まっている。


清潔とは無縁な黄ばんだベッドに身体を埋め、目を閉じる。


ここ、地下の牢獄での生活が始まってから随分経つので、過去のことなど思い出せないかと思いきや、狭い空間での思い出などゼロに等しく何の障害にもならなかった。

社会に存在してはいけない私は、この地下牢獄に捕えられ、生かされ、管理され続けていた。
まずい飯と水は定期的に供給され、困ることはなかった。

しかし、何年か前――食糧の消費量から推測するに約三年前――に突然供給が止まった。

おかしいとは感じた。
地上で何かが起こったのだと。

それでも私は何も興味を持たなかった。
いつか訪れるであろう飢餓の恐怖など微塵もなかった。

これからゆるやかに終わりに触れ、消えていく。
仕方がないと思った。



ぱちっと目を開ける。

どうせ最後なら。
目を逸らし続けてきた、一つの心残りに向き合ってみるのもいいかも知れない。

急にそんなことを思いたって、私は身体を起こす。

そういえば、ここに入る前は面白い女だとよく笑われていた。
男のような性格をした、豪快な女。行動に根拠が伴わない、身勝手な女。

何年も無気力に篭っていたのに、いよいよそれが終わる頃に、こうして動き始める。
散々わがままを言ってきたけれど、これは今までで最大のわがままだ。

会いたい人がいる。
思い切り嫌われて別れたけれど、やはりこのままでは終われない。


伸びたままの髪の毛を後ろで結び、一まとめにする。
これなら邪魔にならない。

私は見上げる。
無機質な天井。
その隅にある、唯一の出入り口。

その気になればいつでも出られたのだ。
これまで何故何もしなかったのか。

それは私も何処かで贖罪の意識があったからだろう。
このまま消え行くのが一番の罪滅ぼし。
そんなことを考えていたのかもしれない。

でも、もういいんだ。
許されなくたっていい。

軽く跳んで、思い切り、低い天を蹴り上げた。
重い金属の悲鳴が響いた後、そこにはぽっかりと穴が空いていた。

予想以上に簡単で、拍子抜けしてしまった。

膝をぐっと曲げ、広がっているはずの空を見据える。

私は今度は大きく跳躍して、何年かぶりの地上を目指す。
ぐんぐんと身体は昇っていく。もう少し。

新鮮な空気を肌が感じ取って、すぐそこに外の世界があることを教えてくれた。

視界が一気に拡がって、閉塞感から解放される。
私はやっと着地した。

陽の明るさを忘れていた瞳が、突然の刺激に耐えられず、私は手で目を覆った。
暫くそのまま動かずにいると、段々と馴染んできて、ようやく私の瞳はその光景を映した。

何かが起こった。
供給が止まったとき、確かに私はそう思った。
非常に重要で、危険な存在の私を忘れるほどの何かが。

それが何なのか深くまで考えたことはなかったけれど。


壊れた、都市。
倒れたビル。割れた道路。大破して転がっている乗り物。
焦げた臭い。不快な音。
この都市は、世界は、壊れてしまっている。

あまりにも自分の記憶と違う世界に、私はただ呆然としていた。

どれくらい時間が経ったのだろう。
結局私は、牢獄から出ても、何も出来ないでいる。

そうしていると、何処からか足音が聞こえた。
近付いてくる。
随分と訓練された音だった。

手に取るように分かる。
私を包囲しようとしている。

大勢が、たった一人の私を囲むように拡がっている。
じりじりとその輪が狭まってくる。

そろそろかな。
私は呆けたままの頭で考えていた。

綺麗にそろって、大きな足音が響く。
一斉に姿を現したかと思うと、既に完全に囲まれて、銃を突きつけられていた。

全員顔全体を覆うマスクを被っている。
こもった声で何かこちらに言っているようだが、聴いたことのない言語だった。

また綺麗に一歩こちらに踏み入れ、一人は私の側頭部に銃口を密着させた。

まだ五月蝿く何か言っている。
理解できない言語で怒鳴り散らかされるなんて、非常に不快だ。

その勢いのまま、銃を持つ手に力が込められていくのを感じた。
筋肉が動くのが見える。私を撃とうとしている。

反射だった。無意識の中での、一瞬の出来事。

銃声が響いたと同時に、私の身体は屈み、その体勢のまま足払いをする。
転倒する相手。怯む大勢。

先程私の頭に触れていた銃が宙を舞っていた。
逃さずそれを掴む。
慣れた手触り。やはり私はそういう人間か。

突然の事態に驚きながらも、陣形を変え、再度こちらを狙ってくる大勢。
中々に良質な部隊だ。

そんなことを考えていると、大量の弾丸がこちらに飛んできた。

昔と変わっていない、真っ直ぐな軌道。
先端に渦巻いている殺意で、空気を切り裂きながらこちらに向かってくるその様子が、愛しい。

おいでおいで。当たってはやれないけれど。

私は瞬時に跳んで、過ぎ行く弾丸たちを見下ろす。
常人ではありえない身体能力。けれど、それを可能にするのが私という存在だ。

跳躍した状態のまま、狙いを定める。

さあ、始めよう。
人差し指に力を込め、引鉄を弾く。

乾いた爆発音。腕に伝う抵抗。
そうだ。こちらに向かってくる真っ直ぐな軌道もいいけれど。あちらに向かっていく軌道はさらに、たまらなく愛しい。

撃つ。撃つ。撃つ。正確に、大胆に。
弾が切れる。着地してまた銃を奪う。今度は二丁。
撃つ。撃つ。撃つ。

戦うことに夢中だった。
硝煙の香りが、私を自由にしてくれる。

気付いたら、あれだけいた大勢が、たったのひとりになっていた。

腰を抜かす相手。まだ何か言っている。

ああ、そうか。

言語は知らないけれど、音の震え方で分かる。
何度も聞いてきた響き。これは全ての世界で共通なんだ。
命乞い。

世界をこんな状態にしたのは、こいつらなのか。
そんなことはどうでもいい。私を殺そうとした。それだけは事実だ。

銃口を向ける。
マスクの下の両の目が、真っ黒な穴に吸い寄せられているのが分かる。

無言のまま引鉄を弾いた。
短い悲鳴が響き、戻ってくる静寂。


私の口元はほころんでいた。
在るべき場所に帰ってきたのだろう。不思議な充足感がそこにはあった。


この都市は、壊れている。
何者かによって、破壊されたのだ。
もう、私の知っているような人間はいない。


感覚を澄ます。同じような輩は、他にも沢山いることに気付いた。

私はありったけの武器を拾う。くすくすと、笑いながら。

どうせ最後なら。
ひと暴れしてやるのもいいんじゃないか。

武装した身体で少し飛び跳ねると、がちゃがちゃと金属がぶつかる音がした。

ふうと大きく息を吐き出すと、濁った空気にすぐに溶けていった。


よし。


乱れた髪を、もう一度綺麗に結び直して。
私は走る。
豪快に。身勝手に。

終わった世界の上を、私は走る。



テンションの暴走に伴い生まれた作品。文章の落ち着きの無さは高すぎたテンションの為。
こういう設定のは初めてですなー。いろいろとチャレンジしてみました。
とにかくアクションシーンを書いてみたかったのです。
冷静なら倉庫行きですが、勢いのまま載せてしまいましたw

いつかかっこいいバトルものも書いてみたい。
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comment











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こんにちは。
いやいや、勢いのまま載せたとおっしゃってますが、これは面白い。
引き込まれますね。
常人ではあり得ない動体視力に、身体能力。
それ故に捉えられていたのか、生きる希望を失ってしまっていたのか・・・。会いたい人の存在も気になります。
アクション小説のワンシーンのような感じですね。
願わくば、もっと読んでいきたい、と思わされました。

2010/03/18 14:37 | [ 編集 ]


初めまして。 

ぽにょまんと申します。
小説を読ませていただきましたので、未熟ながら少しばかり感想を。
後書きにありましたが、なるほど確かに、これは書き手も楽しい作品だと思いました。流れるような文章、目まぐるしく変わる状況。
ありがちなSF設定だけに、こういう読ませ方をされると新鮮さ抜群で、面白いなあと感じました。

また時間を作って、他の作品も読みに来ますのでその時もよろしくお願いします。

2010/03/18 18:11 | ぽにょまん [ 編集 ]


すごい!! 

黒目さんすごい!!
超引き込まれました(*´∇`*)
なんか映像がうかんできて、一気に読んでしまいました。
躍動感をだすのがとてもうまいですね!!

いろいろ読ませていただきたいと思います☆彡
拍手♪

2010/03/18 21:44 | まるとろ [ 編集 ]


 

>篁さん
どでかく風呂敷広げておいて、投げっぱなしな感じになってしまいました。笑
本当にワンシーン、プロローグのような作品です。
一つの物語として完結させるのは、こういう設定ではまだ出来そうもなかったので、単純にアクションシーンを書きたいがために書いてみました。
もっと読んでいきたいなんて・・・!ものすごく嬉しいです!
今のところ全然構想が練れていないので(汗
いつか続きを書けるように頑張ります。

2010/03/19 10:00 | 黒目 [ 編集 ]


 

>ぽにょまんさん
いらっしゃいませっ!!
作者自身テンションそのままに突っ走って書いた作品なので、本当に落ち着きがないです。笑
SFのようなジャンルのものはあまり書いた経験がなかったので、思いっきりベターな主人公にしてみました。
面白いと感じていただけたようで、とっても嬉しいです!
是非またいらしてくださいー!

2010/03/19 10:08 | 黒目 [ 編集 ]


 

>まるとろさん
引き込まれていただけましたか!笑 
ありがとうございますー!

この短編は逆に、躍動感に全て懸けている感じですね。笑
拍手ありがとうございましたっ
お暇があったら、是非他の作品も読んでみてください。

2010/03/19 10:12 | 黒目 [ 編集 ]


 

おぉー!!SFっぽい!

詩的な現状の説明でぐっと引き込まれて、もっと読みたいもっと読みたいと感じました。
映画のバイオハザード3のポスターのような退廃した世界が思い浮かび、映像化したらすごそう、と勝手に盛り上がっていました!

黒目さんの作品ではSFものを拝見するのは初めてですが、とても面白かったです!!続きがすごく気になりますb

2010/03/20 18:56 | ツーヨン [ 編集 ]


 

>ツーヨンさん
SFです!初SFです!w
バイオ3!言われて思いましたが確かにそんなイメージです!
というか敵が軍っぽいのじゃなかくてゾンビさんたちだったら完璧にバイオ・・・
だ、大丈夫ですよね汗

続きが気になりますか・・・
嬉しいコメントたくさんいただいてしまったので、お調子者の黒目は暴走モードに突入しそうですw
いつか載せられたらいいなと思ってます。

2010/03/21 21:30 | 黒目 [ 編集 ]


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