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2010/03/16 (Tue) No.18 断片メテンプシィ

-断片集-
No.18 断片メテンプシィ

0.

写真は良い。
気をつけて扱っていれば、過去の瞬間をいつまでも鮮やかに眺めることができる。

記憶は駄目だ。
どれだけ深く刻み込んだと思っていても、掠れていくことには逆らえないし、突然失われることだってある。

ただ、声や匂い、感触。
それらは実物を失った後は、記憶に頼るしかない。

だから僕は、駄目な記憶とも上手く付き合っていくより仕方がなかった。


世界の果て。
過ちを犯した僕の家。

床。壁。天井。空中。
至る所に飾られた君の写真。

僕はそれらをじっと見つめて、君の全てを反芻する。
思い出に、君という記憶に、一切の綻びが生まれないように。

    


時というものの存在を忘れてしまうくらいに月日が経っても、僕は君に囲まれたまま動かなかった。
動けなかったの方が正しいかもしれない。

けれど、そんな毎日の中で、何がきっかけなのか分からないけれど、ふと思いついてしまった。

君の人形を作ろう。

僕はそう思ったのだ。
別に命を生み出そうなんて馬鹿なことは考えていない。

毎日僕の内に呼び起こされる君という記憶から、既に存在した君を複製する。
未来は紡げない、過去の肖像。
君の形をした、変化する写真。
僕の理想ではないか。

これも随分と馬鹿な考えだとは自覚しているが、写真に全てを託すより有益な気がした。
ずっと変わることがなかったのだから、それ以上は望まなくてもよかったのに。その時の僕はどうかしていた。

一度始めてしまえば、終わるまで続く。
僕はそういう存在で、ずっとそうしてきたのだ。

    


大抵のことは苦もなくこなせる僕だったから、君の人形に出会えるのもすぐのことだと考えていた。
けれど、何回作っても、僕の中の君を再現することは出来なかった。

かくんっ。かくんっ。
みんなどこかが壊れているんだ。

元気かい?
かくんっ。

お腹空いた?
かくんっ。

僕のこと、好き?
かくんっ。

反応は一緒。
どれだけ頑張ってみても、君に巡り会うことはないのだろうか。

心が折れてしまいそうだった。
変化しない毎日に留まっていればよかったのに。
望もうとするから。少しでも目の前に君の姿を望もうとするから、こうして苦しむことになる。

もうこれが最後。
これで失敗したら、またあの延々と螺旋する毎日に戻ろう。
そう決めて、僕は作り始めた。




一度始めてしまえば、終わるまで続く。
そんな存在のはずだった僕は、自ら諦めることを覚えようとしていた。

そう考えると、やはり未練が感じられて、涙が出てきた。

ひたすらに君を想っているから。
君はもういない、それをしっかりと感じているから。

ぼろぼろ落ちる、大粒の涙。
悲しい、愛しい。

笑った顔、泣いた顔。あらゆる君の様子と思い出が、掠れた視界の中で踊った。

駄目だと思っていた、不確かな存在である記憶。
その記憶が、涙を溢している今、かつてない程に彩りをもって、周りに広がっている。

ここにいる。ここにいた。
確かに君は僕の中に居た。

    


はりぼての君を捨てた。もう一度写真で家を覆った。
あの鮮やかな記憶に綻びが生まれないように。
ずっと眺めていた。

    


また数え切れないほどの月日が経って、僕は苦しんでいた。
一度抱いてしまった、些細で大きな望み。

あのとき感じた暖かい彩り。
それを覚えてしまったことで、僕は再び望んでしまっていた。

もう一度だけ。
造りかけだった、七番目の君。
どうしても捨てられなかった、未完の君。

最後の過ち。
やはり僕は、始めたら終わるまで続く、そういう存在だ。



完成した君。
確かに目の前に座る、僕の記憶の中の君。
許して欲しい。
僕は君を本当に愛しているから。

名づけよう。
僕が、やっと会えた君に名を授けるんだ。

悩みぬいた挙句、最初に思いついた「七」に決めた。

なな。なな。なな。

僕は幸せだ。君さえいれば、幸せだ。


けれど、こんな馬鹿な真似をした僕を、世界が許す訳が無かった。

突然、真っ青な空が落ちてきた。
ぐるぐると音を立てていて、怒っているのがすぐに分かった。

こちらから見上げた空は、いつものっぺりとした平面空間に閉じ込められているようなのに。
雲を唸らせながら容赦なく叩きつけてくるそれは、確かに僕から幸せを奪おうとしていた。

なな。なな。なな。

鮮やかな黒髪は空の奥へと散らばっていって、真っ白な右腕は雲に食い千切られてしまった。

痛いのかい?
かくんっ。

泣いているのかい?
かくんっ。

今の君は言葉が使えるだろう。何か聞かせておくれ。風で口が裂ける前に。
俯く君。

空はさらに怒りを僕たちに向けてぶつけてくる。
一枚一枚、写真が渦に巻き込まれて、切り刻まれていく。

妙な浮遊感が身体を包んだかと思うと、家ごと僕たちは吹き飛ばされていた。

辛うじて君の左手を繋ぎとめる。
離さない。絶対に。


宙を舞う君と僕。
必死だった。
何も言わず、ただこちらを見つめる君の瞳を、僕はしっかりと記憶する。

離れたくない。やっと会えたのに。

意地になって耐えていると、空がふっと一筋の細雲を放った。
気付いたときには、僕の両腕はあっさりと身体から分離していた。


開く距離。
上と下。右と左。
秩序を失くした空間で、僕と君は別れた。

それでも僕の耳はしっかりと受け取った。
黒に変わった空に沈む直前、君が放った最期で最初の言葉。

「あいしてる」



ちょっと前に書いてボツ倉庫行きだったものを、無茶なテンションで書き直しましたw
不可解な文。だけど書いてて楽しいという。
タイトル通り、ばらばらな物語です。
時々続きを載せるかもしれない。
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こんにちはー!出勤前の春です*^^*
「俺」がいったい、昔なにやらかしたのかとか、気になりますね^^;
なんというか……
静かな狂気
みたいなものにあふれていて、読んでいてドキドキしました。
ブログ、またのぞきにきます★

2010/03/16 11:43 | 花舞小枝の春 [ 編集 ]


 

これ読んで不謹慎なくらい萌えてるコウは何なんでしょうね...クラミドモナス?黒目さんの語り口って独特ですごく惹きつけられます あと 断片なのに読んでみると意外なくらいすっきりまとまってて 文章完成させられない悪癖持ちには羨ましいです...それとラストすっごい好きですいいなーこういう文書きたい...

2010/03/16 19:06 | コウ [ 編集 ]


 

こんばんは。
人の記憶ほどあやふやなものは無いというのに、僕たちは記憶を糧に生きていきますよね。
鮮明な写真と、朧気な記憶。
精神的な揺らぎを・・・かろうじて自分を自分たらしめているものへの執着を感じます。
一人称でありながら、狂気の淵に立つ者を冷静な視点で俯瞰しているような・・・。
こういう文章を僕も書いてみたいな。

2010/03/16 20:07 | [ 編集 ]


 

>春さん
出勤前!お時間を割いてきていただきありがとうございますっ

なにやらかしたんでしょうね・・・w
いろいろと考えていますが、曖昧な物語なので。

静かな狂気ですか!
何回か書いてるうちに、主人公にも愛着湧いちゃって、自分では結構普通の感覚に陥ってしまっていましたw大丈夫だろうか・・・

次もドキドキさせられるような物語を書きたいと思います。
是非またいらしてくださいー!

2010/03/16 22:04 | 黒目 [ 編集 ]


 

>コウさん
萌えていただけましたかw不謹慎でもなんでもないです。むしろありがとうございます!
もうこの二人自分でもそういった感情のままに動かしてましたよ・・・汗
語り口、独特ですかね?
読書自体あまりしない子なので←
影響受けたというのは、それこそ芥川くらいのものですが(全く感じとれないw
悪癖・・・黒目は連作始めたと思ってもすぐに投げちゃうところですな。その分、一区切りつけられる断片集は気軽に載せれます。
今回は一応続く物なんですけどねw

ラスト気に入っていただけましたか!
このシリーズは多分、こんな感じで終わっていくので。
ワンパターンにならないように気をつけながら書いていきたいと思いますっ。

2010/03/16 22:13 | 黒目 [ 編集 ]


 

この世界の映像がハッキリと見えました!驚きです!
黒目さんの現実とファンタジーの間のような物語好きです。
ナナのモデルの人は一体どうなったのか、死んでしまったのか離れていってしまったのか。
そして「僕」は大丈夫なんだろうか・・・空の中で腕がちぎれてしまって(ゾゾ~ッ)
妄想の余地があるので脳内でいろいろ保管しておきますね(笑

2010/03/16 22:18 | ホチ [ 編集 ]


 

>篁さん
今回は、心の底から想っているのに独りでに失われていく記憶、そしてそれと付き合っていかなければいけない葛藤のようなものを描きたかったです。

写真と記憶の関係は、常からいろいろと思うことがあったので主な部分に据えてみました。

特に記憶関係は、自分自身に深いところで関係しているものなので、これからも扱うと思います。慎重に。

2010/03/16 22:26 | 黒目 [ 編集 ]


 

>ホチさん
現実とファンタジーの間ですか!自分では考えていなかったですけど、それってとっても素敵な世界観。
これ予定ではループモノというか、転生モノのような感じで続く(はず)なのです。
断片集のカテゴリで、すこーしずつ進んでいくと思いますw

最初の予定では、手が離れてしまって別れていたのですが、異常なまでに愛する人(人形ではありますが)の手を、そう簡単に離すとは思えなくて。
しつこくしがみつく主人公を、心を鬼にして腕ごとざくっとw

本当にばらばらな物語なので、この二人でいろいろと妄想していただけるとありがたいですw

2010/03/16 22:33 | 黒目 [ 編集 ]


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