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2009/08/31 (Mon) No.12 blank map

-断片集-
No.12 blank map

「白地図って知ってる?」
俺の横を歩きながら、彼女は突然そんな風に言う。
一通り今発せられた言葉を頭の中で繰り返してみるが、耳にした覚えはない。
「なにそれ?」
正直に、彼女に問う。
「輪郭だけの、まっさらな地図のことだよ。」
さらりと説明して、彼女は紅く染まり始めている空を見上げる。
それっきり口を閉じてしまったものだから、俺はなにも理解できずに、黙って歩く。

ざっざっざっざ。ざっざっざっざ。

でこぼこの道を踏み進めていく音が、小気味よく並んで鳴る。
まだまだ通い慣れていない道だったけれど。
車は滅多に通ることはないし、他の生徒もほとんど見当たらない。
大好きな彼女と一緒に歩くには申し分ない道だ。

「私たちみたいじゃない?」
ぼうっとしていると、また突然彼女は言った。
「何が?」
少し驚きながら、慌てて返す。
「だから、白地図。」
意味の分からないことを言う。
彼女はその頭の中でいつもポエムなんかを考えているらしいから、発言がいちいち凝っていることを、今更ながらに思い出した。
「何で?」
説明を求めて、問う。
「だって。
 今年から私たち、高校生だけどさ。
 まだ、就きたい仕事とか、何にも決まってないじゃない?」
小さな笑顔を作りながら、彼女は続ける。
「まっさらなんだよ。私たち。
 これから三年間、いろんなことから刺激を受けてさ。
 いろんな記号とか色をつけられていって。
 少しずつ、作り上げていくんだよ。」
ふわりとこちらを振り返りながら話す彼女は、きらきらと輝いて見えた。
「それで、いつか大人に近づいたら、まだまだ未完成なその地図を広げて、不安だけど ゆっくり歩き始めるんだ。」
もう一度空を見上げて、彼女は大きく両手を広げた。
勝手に一人で話を終えて、悦に浸っている。
この会話の中で俺の言葉なんてほとんどなかったかもしれないけど。
これが俺たちのいつもの会話で、いつもの心地よい距離感。
だけど、男として、受け手にまわってばかりもいられないから。
笑顔を作って、言う。
「じゃあ、今のところ、その地図の真ん中に描かれているものは?」
彼女は、俺との距離をくいっと詰めて、笑顔で言う。
「それは、もちろん―――」
手を繋ぐ。
まだまだ、なにもない俺たちだけど。
ゆっくりでいいから、一緒に歩いていこう。
そう思った。



つい先程コミュの「断片小説」に載っけたものです。
なんかめっちゃ恥ずかしいものを書いた気がしますぜ。
某コミュニティサイトをやりはじめた頃(高1の初め)に書いた日記の内容をSS風にしてみたものです。
あの頃は希望に満ち溢れていたのですな。今は死んだ魚の目のような・・・笑
あ、女の子は実在しませんよ。
日記内容は白地図についての考えだけなので。笑
というか、FILE2も書き終わってないのにこんなことしてていいのか。
でもなんとなくこういう『高校生ノベル』も書けるんだぜっていう微妙なアピール。
青臭いだけですか。ごめんなさい。

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2009/08/31 (Mon) これでも物書きです。

眠れない。
小説書こうとしてもはかどらない~

んで、なんとなくバトン。

創作小説バトン

Q1 執筆歴は何年ですか?
A1 3年くらい。
Q2 今まで幾つの小説を書きましたか?
A2 20にも到達していないかと。まだまだです。
Q3 主に書くジャンルは何ですか、また挑戦したいジャンルは何ですか?
A3 恋愛を多少含む現代劇?今はホラーちっく。ファンタジーものと伝奇でバトルなものに挑戦してみたい。
Q4 小説を書く際に、気をつけている事は何ですか?
A4 言い回しを工夫して情景に説得力を持たせる(ようになりたい)。時々異常なほどに感情移入させて書くこと。登場人物に近い表情を無意識にしているらしいです。
Q5 執筆はパソコンですか、紙ですか?
A5 パソコンおんりー。
Q6 パソコンの人は、どんなソフトを使っていますか?
A6 メモ帳。ワード重っ
Q7 一番筆が進むのはどの時間帯ですか?
A7 23時~1時
Q8 今まで書いた小説の中で、気に入っているものを挙げてください
A8 ラルス・カヌス
Q9 その小説のどこを気に入っていますか?
A9 最終章で力量の無さを痛感させてくれた。書ききったときは非常に気持ちがよかった。
Q10 今まで生み出したキャラクターの中で、気に入っているキャラクターを挙げてください
A10 ウタ。ダイスケ。『あなたと』のわたし。甲村。
Q11 そのキャラクターのどこを気に入っていますか?
A11 ウタはビジュアル化していただいたものに惚れた。笑 ダイスケはめちゃくちゃ動かしやすかったところ。わたしは、まっすぐに書けたところ。甲村は、こいつほどのめりこみながら書いた人物はいない。
Q12 何か賞を狙ったことがありますか、または取ったことがありますか?
A12 全くないです。いつかは挑戦してみたい。
Q13 小説家を目指していますか?
A13 いいえ。
Q14 ら抜き言葉や、その他言葉の乱れは気になりますか?
A14 最近気になるようになってきました。
Q15 ありがとうございました。最後に、これからの創作活動にあたっての目標を一つ掲げてください
A15 受験解放されたら、文庫本一冊クラスの長編を書ききってみたい。というか、書きます!

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2009/08/28 (Fri) FC2トラックバックテーマ  第802回「リメイク作品についてどう思う?」


FC2トラックバックテーマ  第802回「リメイク作品についてどう思う?」




初めてトラックバックなるものを。
リメイク作品。

ゲームに関して言えば、作品にもよるけど賛成です。
黒目が個人的に希望するのは
「デジモンワールド」
の初代のやつ。
黒目の小学校ではポケモンよりデジモン派が多くて、みんなでワンダースワンやらプレイステーションやらでデジモンばっかやってました。
なんかデザインはポケモンより圧倒的にデジモンがカッコイイ気がする。
欠点はあれですね。
デジモンの名前でしりとりができない。笑

もうひとつは結構最近?だけど
「ラジアータストーリーズ」
世界観が絵本みたいですごく楽しかった。
物語も序盤から中盤がいいんだけど、エンディングがね・・・
途中で人間側につくか妖精側につくかでシナリオ分岐する地点があるのですが、人間編は特に最期すっきりしなかった。
シナリオ分岐する選択肢の時、思わせぶりに下にスペースが空いていたものだから、当時は真エンディングがあるんじゃないかと話題に。
ディスク解析ですぐにそんな容量はないと分かったみたいですが。
コミックス版は中々綺麗な終わり方で面白かったのですが、それでも二次創作する人が沢山出て、かなりの量を読み漁ったものです。笑
その中でも特に面白かった作品が、作者の方が突然テイルズの二次創作を始めて更新ストップ。トラウマでした。

あとは、リメイクじゃないけど続編希望で
「ドラッグオンドラグーン」
1と2やりましたが、1はゲームの中で一番好きな気がします。
とにかくシナリオのダークさが異常。
2は随分とソフトな感じになっていて少し残念。
多分1をプレイしていたのは小学六年のときだと思うのですが、今の黒目の創作の根本にはこのダークさが染み付いている気がします。笑
でも、内容は本当に他のものでは見られない、衝撃的なもので、売ってしまったことをもの凄く後悔しているのです。
前に借りようとしていたのですが、結局うやむやになってしまって。
いつのまにかあんまりゲームなどする余裕のある立場ではなくなってしまいました・・・

その借りようとしていた相手の人が、女の子なのに格ゲー大好きという猛者でありました。笑
女子で「ドラッグオン~」の話ができる人がいることにびっくりしましたよ。
結論は自分たち病んでるね。でした。


そういえば、前に「次は楽しい話書く」って言った気がするのに、あんな暗い話を連載スタートさせてしまいました。汗
今途中書きのものとか見てみても・・・
3つの内2つが暗いね。うん。
今書いてるやつがおわったらコメディでも目指してみようかと思う黒目でした。

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2009/08/25 (Tue) 【FILE1】甲村陽一の場合②

甲村編の続きです。
ところで、前回切るところを間違えるという阿呆なことをしてしまいまして。
まあ大してかわらないのですが、始まり方に読みにくさを感じるかもです。ご了承をば。




ふぅと、昨日よりも深く息を吐いた。

相思相愛というものだというのに、片方は初心というもので、もう片方は変に警戒して慎重になっている。
随分と滑稽な図式であったが、こういうものは、そのうち丸く収まるのが常である。

甲村はそう思って、二人のためなら多少の面倒は被ってやろうと決めた。




それから何度か、甲村は二人からの相談を受けた。
勿論個々にである。
それぞれから見当違いな悩みや、考えすぎな些細な事象を、留まることを知らない豪雨のように浴びせられた挙句、それを相手に伝えるなと縛られているのだから、色恋沙汰だといってもそれはさながら拷問のようであった。

いつまでも焦れったい態度を崩さない双方に、甲村はだんだんと苛苛を積もらせたものだったが、こうなったら結ばれるまでとことん付き合ってやると、一人勝手に開き直ったのであった。


しかし、その決意はすぐに揺らぐこととなる。


二人から相談を受け始めてひと月が経つ頃だった。
その日は笹原と待ち合わせをしていて、甲村はいつものようにコーヒーを啜っていた。
窓の外をずっと眺めていた甲村は、笹原がそっと近づいてきていることに気付いていなかった。
なにやら気配がしたと甲村が振り返ると、すぐ目の前に笹原の顔があり、驚きを抱えながら反射的に後ずさった甲村は、窓に頭をぶつけてしまった。

「はは。驚きすぎだって。陽一って意外と小心者?」

笹原にとっては単にふざけただけだったのであろう。
しかし、見上げた先には、いつもより随分と粧し込んだ女の姿があって、甲村はそれに魅入られたように固まってしまっていた。
特に反応を示さない目の前の男に、どこか様子の違いを感じ取って、

「あまりに可愛くて見蕩れてしまった?」

からかうように、笹原が言った。

その言葉にはっとした甲村であったが、いつものように冗談を交えて返そうとしても、頭の中を先ほどの光景が埋めてしまって思いつかない。
すっかり混乱状態に陥るかというところ、手にカップが添えられていたのが思い出されて、下手な演技で咳き込むことにしてその場を逃れた。


その日の午前、つまり甲村と会う前に、笹原は園田に誘われて買い物に付き合っていたという。
笹原曰く、

「園田君から誘ってくれたの初めてなんだ。朝からめちゃくちゃ気合入れちゃった。」

とのことだった。
最初は、やっと園田も動く気になったのかという変な安堵感を感じたものの、先ほどの自分の感情が存在感を増してきているのに、甲村は気付いていた。

買い物に付き合ったといっても、昼を過ぎて少しの時間に分かれているようでは、二人の関係はさほど進展していない。

そんな事実を、もどかしく思うはずの立場の甲村なのだが、このときから思考の方向が真逆となった。
甲村は、それがとても恐ろしいことだと、自覚していた。

二時間程会話を続けたはずだが、甲村の頭の中には最初の十分程度の記憶しか残っていなかった。

還った後も、甲村はただただ自分の感情を抑制しようと努めた。
けれど、一度気付いてしまったものはどうしようもなかった。
甲村はソファに横たわり、目を瞑る。


いつ頃からだったのだろうか。
そうだ。最初から。
ずっと心の何処かであの笑顔が渦巻いていたけれど、何かがきっかけで隠してしまったのだ。
何であっただろうか。


少し起き上がって、体を捻って体勢を変え、またソファに沈む。


そうだ。
あの日、あいつから打ち明けられて。
それをきっかけに、心を、譲ったのだ。


何かを壊す一歩手前にいるのだという張りつめた感覚が、ちくちくと甲村の胸を刺した。
目を強く瞑る。
甲村はそのまま、眠りについた。




この日以来、二人の相談を受けることは甲村にとって拷問としか呼べないものになっていた。

相も変わらず無意味な探りあいをしていると思えば、顔を赤らめ、物憂げに語り始める。

笹原と会って話すときには、否でも意識をしてしまうし、園田と話すときには、度々生まれる黒い感情に甲村は悩まされた。



甲村は心から、二人を信頼し、好いていた。

それ故に、今の自分の願いがこの二人の仲を裂くことだと気付き、その度に自らを責めることとなった。



結局、園田と笹原は同じような関係を維持したまま、夏が終わってしまった。
この頃になると、甲村は気が狂いそうになることもあった。
いつまで経っても関係をはっきりとさせずに、ただ思いの丈を自分へと漏らしてくる二人は、たちの悪いいたずらをしているとしか思えなかった。
実際、甲村から見れば、二人は本当に交際したいのか分からず、ただこうして悩む時間を愉しんでいるようにしか見えなかった。




「それじゃ。また今度ね。」

そう言い残して笹原はいつものように喫茶店を後にした。
最近の笹原との話の内容に、園田が登場することが少なくなった。
今までひたすらに、受ける側に回っていた甲村が、自分から話をするようになったからである。
甲村は、笹原のことが好きだということを、隠す気がなくなってきていた。
惰性のように続くこの喫茶店での『相談』は、甲村にとっては笹原と二人きりで話せる良い機会となっていた。

なんとなく店を出る気になれなかったので、コーヒーを注文して、一人居座る。
あの長かった日も少しずつ短くなってきている。
『仲の良い三人』という関係も、同じように擦り減っていくのではないだろうか。
それとも、心の深くではとっくに壊れているのかもしれない。

そんな風に甲村が考えていると、突然向かい側に男が座った。
園田慶太だった。

「本当にコーヒーが好きだな、甲村は。」

雑じり気のない、爽やかな笑顔で園田は言った。

「まあな。」

あまり良くない想像をしていたため、突然の登場に甲村は少し緊張してしまう。

「なんだ。随分と冷たいじゃないか。」

にこにこと笑顔をこちらに向けながら、園田が言う。

甲村は、その瞳でしっかりと目の前の園田を映しているはずなのに、屈託の無い笑顔がすぐそこまで浮かんできては、ぐにゃりと崩れていった。

どうして、こいつは笹原に惚れたのだろう。
どうして、こいつは惚れたのに手に入れたいと必死にならないのだろう。
どうして、こいつのせいで俺が苦しまなければならないのだろう。

絶対に、園田より俺の方が、笹原を想っている。
いつまでも想いを伝えられない園田より、俺の想いの方がずっと優れている。


カップの中に潜む焦げた液のように真っ黒な思考が、甲村の中でぐるぐると渦巻く。
甲村の中で、なにかがはじけそうだった。


「どうした甲村?そんなに恐い顔をして。」

甲村ははっとした。
目の前には、心配そうに自分の方を覗き込む親友の姿。
今度はしっかりと、その表情を認めることが出来た。

胸が締め付けられるという表現は、実に的確だと、甲村はひしひしと感じた。

やはり、自分はこの男が好きなのだということを、甲村は改めて思った。
そんな中で、それでも笹原のことを諦められないとも感じていた。

甲村はもう、ここで打ち明けようと思った。
これ以上は、どうにかなってしまいそうだったから。

甲村が意を決して、園田へと声を発しようとしたときだった。

「甲村はさ、好きな人とか、いるのか?」

甲村の声は、呼吸と共に止まった。
全身の肌が逆立つ。
なぜ、急に、そんなことを。

「俺はさ、いつも甲村に相談してばかりだろう。
 力になれるかどうかはわからないけど、悩みがあるならさ。聞くことくらいはできるかなって。」

柔らかい、優しい声で、園田は言った。
甲村は、頭が破裂するのではないかというくらいに、様々なことを考えた。
そこには、笹原と園田の、それぞれの笑顔と泣き顔が映りこんでいた。


「初めて俺が相談したとき、あれだけ偉そうに話してたろ。好きな人くらいいるんだろ?
 教えろよ、相棒。」

園田は笑い声を交えながら、手を伸ばして甲村の肩を叩く。


盛り上げどころではきちんとのる。それは園田のいいところだったな。
だけど。違うよ、園田。


甲村は、口を開いた。

「好きなやつなんていないよ。
 地元抜けてから碌な女に会っちゃいない。
 おっと、お前に悪いな。」

はっはと笑いながら、そう返した。甲村の、逃げだった。

園田は、いつものような冗談交じりの返答をした甲村に、少し満足したようであった。
あと少し長く、園田が甲村を覗き込んでいたら、その虚勢は破られていたかもしれない。
けれど、適当に用をつけて足早にその場を後にする甲村に不信感は抱いても、その真意には辿りつかなかった。
恋愛に疎いということに加え、今まで長過ぎるほどに笹原のことを取り上げて会話し続けてきたため、甲村が笹原に惚れるという可能性に気付けなかった。


甲村は、走った。
もうこれで、自分は権利を失ったと、そう思っていた。
甲村は二人を恨んだ。
もっと早くはっきりしていてくれたなら、こんな思いはしなくて済んだのだから。

あてもなく走ったものだから、あまり馴染みのないところまで来てしまった。
夜が近づいてきていて、このままでは道に迷ってしまう。
甲村は、それでもよかった。
とにかく今は、なにも考えられず、なにも考えたくなかった。

ふらふらと歩く甲村の前に、小さな公園が広がっていた。
その隅のところにベンチがあるのを認めて、甲村は腰を落ち着けた。
少しの間、濃くなっていく闇を見つめて、やがていつもソファに沈むのと同じ体勢をとる。


眠ってしまおう。
ひたすらに、暗闇の中へ沈み込んでいこう。


そう思って、いつかと同じように、強く目を瞑った。

その瞬間。

「随分と傷心なようで。
 そこまでしていらないものを抱えるなんて、人の子というものは理解に苦しみますね。」

甲村の頭上で、声がした。

甲村はがばっと身を起こす。
何か危険なものが近づいてきていて、本能だけが警鐘を鳴らし続けているような、そんな気がした。

「ふふふ。
 ここですよ、ここ。」

声の主が見当たらず、首を振り回し続ける甲村に、再び声が降った。
高くも低くもなく、妙に艶かしい声。

その声を聞いたとき、甲村は理解した。
この声の主は、浮いている。俺の、ずっと上のところから、見下ろしているのだ。

はっとして、黒い空を見上げると、乱れたリズムで点灯する、古びたライトに照らされた人の姿があった。

見上げている状態だから正確ではないが、体躯は細長く伸び、暗闇に溶け込む色に染まったスーツを着こなしている。
きつく締め上げられているネクタイも同じ色のようで、葬式にでも現れたかのようであった。
顔立ちは見たこともないほどほっそりとしているようだが、深くハットを被っている所為で目元は分からない。
照らされた肌の色は白そのもので、辺りを包む闇の中、異常なほどに冴えていて不気味であった。

甲村はそれを見て、最近サークルで聞いた、『空間に映像を投影する技術』を思い浮かべた。

目の前に広がる光景を、それ以外で説明する手段を、甲村は持ち合わせていなかった。
しかし、未だにそんな技術は夢物語だという話もしていたはずであった。
そこまで考えが至ると、甲村は思考を止めた。目を背けたのである。

「私の存在が、信じられませんか。
 それも仕方ないでしょう。人の子は少しばかり視野が狭すぎる。」

これ以上関わらないほうがいいと思っていながらも、何故か甲村は、浮かぶ人ならざるものに目を奪われてしまう。
柔らかい、粒のように降ってくる声を聞いていると、漠然とこの存在はまさに目の前に居るのだと、そう確信してしまうのだった。


証明などできないが、確かに自分の頭上に、居る。


「なんなんだ、お前は!」

そう怒鳴って、威嚇してやろうと思っていた甲村だが、既になにも考えられなくなってしまっていた。

「私はあなたに危害は加えませんよ。安心してください。
 それよりも、むしろ感謝して欲しいのです。」

こくこくと、降ってくる声に頷いていた甲村だが、最後の言葉に首を傾げた。

「感・・・謝・・・?」

「そうです。憂いるあなたに、ささやかなプレゼントを。」

そう言って、ふわっと手をなびかせるように振った。

いつの間にか両手を差し出していた甲村の元には、赤のリボンで可愛らしく包装された箱があった。
何が起きたのか理解できず、甲村は親とはぐれた子供のような目つきで、送り主を見つめる。

見つめる先の人ならざるものは、こくりと穏やかに頷いて、その先を示す。

甲村は、操られた人形のように、不器用にその手を動かし、包装を解いた。
被せられただけの、紙の蓋を開けると、そこには、銃が入っていた。

「・・・・・・・!!!」

魂が抜けたようだった甲村だが、視界に一度それが入ると、寒気が全身を這いずり回り、呼吸が乱れる。
暗闇よりも深い、つやつやとした黒を放ち続けるその物体は、頭上を浮かぶ異形よりもずっと現実味を帯びた恐怖をもたらした。

動悸が激しくなる。
甲村の心のどこかでは、触れてはいけないと叫び続けているというのに、黒の魅力に導かれるままにその手は銃を握った。

これで、俺はどうすればよいのだろう。
※※を、※※ばいいのだろうか――――

どんよりとしたものが一瞬思考を支配したことに、甲村はひどく怯えた。
捨ててしまいたい。こんなもの。
そうだ、捨ててしまえ!!

そう思って振りかぶるが、甲村の行動はそこで終わってしまう。

混乱と恐怖、そして内に眠る狂気に弄ばれ続ける甲村に、送り主は耳元まで口を近づけてささやく。

「それは、全てを壊すことのできる銃です。
 モノだって。人だって。社会のルール、秩序さえも。」

「全てを?」

甲村ははっとする。
そのとき甲村の頭の中をよぎったのは、さっきと同じ、二人の笑顔と泣き顔だった。

「人の感情など、容易く壊すことができますよ。
 心そのものを壊してしまうことも出来るし、ごく小さな範囲でも―――
 そう、例えば誰かに対する好意、とか。」

深く深く、誘惑するように、声は甲村の鼓膜を揺らした。


思考が黒に染まっていく。
じわりじわりと、甘い毒のように広がっていく先に、ずっと望んでいたものがある気がした。

「使い方はとっても簡単。
 あなたが壊したいものを念じれば、それが弾丸となるのです。
 対象へと狙いを定めたりする必要はありませんから、引き金を、引く、だけ。」

送り主は、ばーんと口で言いながらしなやかな指を動かし、銃を撃つ真似をした。

「けれど、一つだけ留意しておいてもらいたいことが。
 その銃を使うことが出来るのは、たった一度だけです。
 どうかお忘れなきよう。
 それでは、期待していますよ。」


最後は脳に直接声が送り込まれてくるような感覚がして、甲村がはっとすると、いつの間にか一人になっていた。


何者だったのであろうかなど、甲村にとってはどうでもよいこととなっていた。
確かに手が感じている重み。
それだけで、この銃の持つ異能の力を疑いもしなかった。


視線はただ真っ直ぐに、艶やかな黒へと注がれている。


甲村の頭の中で、短いながらも濃密な想い出たちが、ぐるぐると渦巻いていた。
これだけ異様な状況に置かれていても、浮かんでは消える二つの笑顔は、やはり甲村にとって大切なものだった。



胸が、張り裂けそうだ。


甲村は、引き金へと指を伸ばす。


それでも、俺には、手に入れたいものがあるから。


かちゃりと渇いた音がして、目の前の黒が深くなった気がした。


掌は異常な量の汗で濡れていて、指は痙攣しているかのように震える。


息が、荒くなる。


夜の闇に冷やされた空気は、どれだけ吸っても苦しくて。


肺に刺さるような感覚だけが、途切れることなく甲村を覆う。


苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。


ぼろりと、何かが流れ落ちた。


甲村にとってそれは何か分からなかったけれど、頬を伝う一筋の暖かさは、確かに感じ取った。


ごめん。 ごめん。 ごめん。 ―――ごめん。


「うあぁあああぁあああぁぁぁ!!!」






――――――。





はぁっと空へと息を吹きかけた。
体に温められたその息は、途中で白を帯びて綺麗に散っていく。

「うう。寒い・・・」

寄り添って歩く笹原は、体が一回り大きく見えるほどに着込んで、マフラーまでもぐるぐると巻いているというのに、縮こまって言った。

「本当、寒いよな。
 年の初めは炬燵にミカンと決まっているというのに。」

「こういう慣習的なものにえらく拘るのよね。慶太は。」

「頭固いからな。ステレオタイプとかいうやつじゃないか?」

「うーん、ちょっと違うような。」

二人してぶつぶつと話していると、話題に挙がっていた人物の声がする。



律儀なやつだから、待ち合わせより早く来ていたのだろう。

大勢の参拝客の流れに合わせて、丁寧に敷かれた砂利をさくさくと踏みながら進む。

少しばかりの沈黙が流れた。

けれど、それはとても穏やかで。

仲の良い三人だからこその、優しい沈黙だった。

人ごみがずっと密度を増して、俺達は立ち止まる。

そうだ、賽銭を準備しないと。


「甲村は、なにをお願いするんだ?」


雑じり気のない笑顔をこちらに向けながら、話かけてくる。


「そうだな・・・」


うーむ。と、わざとらしく唸ってみせた。



腕にくっつくように歩く笹原をちらっと見て、ほんのり笑顔をこぼす。




どうか。



どうか、この幸せが。



長く、長く、続きますように。



【FILE1】 甲村陽一の場合 ~ふぁいるいち こうむらよういちのばあい~





読んで下さった方、ありがとうございます!
予定では甲村編はもっと短かったのですが、少しエピソードを足したりして中途半端な長さになり、後半超展開といった感じに・・・
書き直したいところがいっぱいあったので、投稿を遅らせようとも思いましたが、いざ修正をいれると余計不自然な状況に陥ったりしまして。汗
上手に終わりに持っていけないこの歯痒さ。精進します。
甲村たちは少し後の方でまた登場するので、あんまり嫌わないでやって下さい。笑

FILE2は今ちょっとずつ書いていますが、これよりずっと短くなると思われます。
まだまだ書けていないので、早くて来週の半ばといったところかもです。
ものっそい遅筆で申し訳ありませんが、次回もどうぞよろしくお願いします。



【次回キーワード】
歪む 愛情ゲーム やっぱりあのお方登場

次は、【FILE2】佐久間都の場合 です。お楽しみにっ。


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【FILE1】甲村陽一の場合①

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【FILE2】佐久間都の場合

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2009/08/22 (Sat) 【FILE1】甲村陽一の場合①

新しく小説を載せていきたいと思います。
「断片集」の「No.2 口径 is 9mm」がもとになっているので、読んでいない方は是非。
「口径 is 9mm」は、ブログ記事を書くときに、その場で思いついた物語をそのままうちこんでいったもので、黒目自身も着地地点が見えず、書いていて非常に楽しめました。
(他に、「No.7 落下流水」、「No.11 花火、散ル」なんかも同じように)
普段の拙い文章よりさらに粗の目立つ作品なのですが、素材自体は面白いのではないかと思い、少し長めの物語として書くことにしました。

今回は、文章の綴り方を今までと変えてみたりと、微妙なチャレンジもあるため、見苦しいかもしれませんが、どうかお付き合いの程宜しくお願いします!





【FILE1】 甲村陽一の場合 ~ふぁいるいち こうむらよういちのばあい~

甲村陽一は悩んでいた。
今年から憧れのキャンパスライフとなり、充実した毎日を過ごしてきた彼であったが、中々に面倒な立場に追いやられていた。
大学というものは、専門的な分野へと身を乗り出していくものだから、同じ趣向を持つ人物と巡りあう事も多いであろう。
甲村は、大学へ入ってすぐに、『笹原理沙(ささはら りさ)』、『園田慶太(そのだ けいた)』という同級生二人と親交を深めることとなった。

きっかけはというと、軽い気持ちで参加したサークル内であった。
映画の研究という名目で活動しているようであったが、その実際は交流が中心といったもので、特別に知識を必要とされることはなかった。
甲村は、勉強以外でひたすらに打ち込みたいと思えるものもなかったため、随分と居心地がよく気に入ってしまっていた。

そんなごく普通な彼が、どんな面倒を目の前に溜息を漏らしているかというと、まさにこの同級生二人に関してであった。
二人とも、一定の地域から単身初めて飛び出したときの、いいようのない不安感を共有し、解消していった間柄であり、簡単には声に出すことには気が引けるとしても、「親友」と表現して問題はないだろう。

しかし、だからこそ今回はそういった関係が裏目にでてしまった。
現在甲村を悩ませている面倒というのは、所謂『恋愛』のことであったのである。

新しい空気に馴染むのに必死で、『光のように』と言っても語弊など引き起こすことがないと断言できるほどに速く、あっさりと春が終わりを告げた。
例年よりも随分と気温が高く、まるで体の一部であるように、大学配布の団扇を働かせていた、初夏のこと。

甲村の携帯電話に、なにも飾られず、ただ簡潔に「相談がある」とだけ書かれたメールが届いた。
白い画面にその一言だけが浮かぶ様子は、不気味なくらいに静かであったが、その簡潔さが逆に相手の緊迫した状況を主張しているようにも感じられた。

メールを寄越した相手は、園田慶太であった。
最初は真面目にと取り繕っていた甲村よりも、『素』の実直さで上回るほど、大人びた人物である。
それに加えて、盛り上げどころではしっかりと波調を合わせることもできるため、人当たりが非常に良い。

少しばかり焦りすぎて、待ち合わせの喫茶店に早く到着していた甲村に対して、園田は開口一番、

「俺は笹原理沙に惚れてしまった。」

などと口走った。

甲村は、園田は自分より優れていると常々思っていたものだから、頼られたことに得意気になっていて、少々ポーズなども決めてコーヒーを啜っていた。
そんなことをしている所へ、急に心の内を告白され、しかもそれがあまりに意外なものであったので、甲村は漫画のように、焦げた液体を卓上へと吹き散らしてしまった。

ごほごほと咳き込んでいる間に、園田は甲村の向かいに腰を落ち着かせ、上目がちに真剣な顔を覗かせた。

「甲村は、どう思う?」

甲村の様子が静まるのを見計らって、園田が言った。

「どう思うって・・・。笹原?」

鼻にでも流れ込んだのであろう、甲村がナプキンを顔の前で広げ、しかめっ面をしながら返す。

「今、俺が笹原理沙以外のことを話題に上げたか?」

「いや、『笹原理沙に惚れた』としか聞いていないけどな・・・」

甲村は、うーむ。と、わざとらしく唸ってみせる。
頭の中では、毎日のように顔を合わせる女子の様子を鮮明に描き出す。

笹原理沙。
非常に明るく、竹を割ったような性格の持ち主で、話し相手を爽快な気分にさせる人物である。
容姿は一般に比べて、飛びぬけているというほどではないにしろ、美人と呼べるであろう。
この三人グループの中では、一番行動力があり、男二人を差し置いてリーダーのようでもあった。

「確かに、笹原は美人だ。性格はさらに美人だな。
 だけどな・・・」

甲村は、思ったことをそのまま口にした。
続きを少し濁らせると、園田はずいっと身を乗り出す。

「だけど、なんなんだ?」

たまらず声に出した園田に、甲村は苦い笑みを作りながら言った。

「園田、お前は必ず尻に敷かれるぞ。」



現在の自分の住処へと還って、甲村はふぅと息をつく。
そこで、携帯電話が突然振動を起こし、その存在をアピールする。
体の力を抜いた瞬間に鳴るものだから、甲村は驚きとびはねてしまった。

情けない行動をしてしまった恥ずかしさからか、見られていたはずなどないのに、甲村はきょろきょろと周りを見渡す。
そうして少し経つと、古びたソファへと腰を下ろし、今度こそはと深く息を吐いた。

ジーンズのポケットから携帯電話を取り出し、広げる。
長い日が暗闇を帯びるほどの時間であったから、小さな液晶が孤島のように寂しく浮かぶ。

届いていたメールを開くと、絵文字の手が見える。
まるで孤島に流れ着いた人が、必死に助けを求めているようだと、甲村は思った。

メールの内容はというと、絵文字などで飾られてはいるが、その旨は今日園田から受け取ったものと同じだった。
差出人は、笹原理沙。
そこには手を合わせてお願いしている様子や、水色の汗によって困っている様子が中々に凝って表現されていたが、結局は「相談がある」とのことだ。
偶然にも、待ち合わせ場所は今日園田と会った喫茶店であった。
よく三人であそこに出かけたりもするから、不思議なことではなかったが。
逆に、どちらか一人と行く場合の方が少ないというのに、二日続けてとは、妙なこともあるものだ。
そうは言うものの、笹原の場合は何か好きなものをおごると書いてあった。
それほど裕福ではない身分、喜んで引き受けようではないか。

そんなことを考えながら、甲村は部屋の電気を灯し、テレビを点ける。
視線は光を放つ箱へと向けながらも、頭の中では今日あったことを思い返していた。



甲村が思ったままのことを口にした後、園田の意外な一面を知ることになった。
とにかく、園田は恋愛に関して疎かったのである。
聞けば、今までまともな交際はしたことがなく、好きだと実感したのも今回が初めてだという。

それを聞いた甲村は、親友の頼みであるということに加え、園田をリードできる分野を見つけることができた喜びで、随分と興奮していた。
終いには、徐に携帯電話を取り出して、

「こういうのは先手必勝というものだよ。」

と調子に乗る始末であった。
しかし、そこで園田があまりにも顔を上気させて、もしかしたら涙までをも浮かべて、拒否するものだから、甲村の悪戯もそれまでとなった。

「しかし、相談を持ちかけてきたときの態度とは随分と変わるものだな。」

からかって甲村が言った。

「うるさいな。本当に、どうしたらいいのかわからんのだ。」

「だから、さっさと『好き』って言ってしまえばいいのだよ。」

そう言って携帯電話のアドレス帳を開いて園田に押し付ける甲村。

「・・・・・・!!」

そんなことをするとまた園田が顔を赤らめて騒いだ。

結局、この日は最後まで甲村が園田をからかって終わった。




「まさか、明日は笹原とあそこに行くことになるとはな。」

時々じじっとしたノイズが入る放送の音を聞き流しながら、独り言を呟く。

明日会ったら園田のことをさりげなく教えてやろうかとも思ったが、流石にそこまでいくと愚行である。
それに加えて、今日の別れ際に、

「俺と甲村だけの秘密だからな。絶対に喋らないでくれよ。」

と念を押されていたのである。
とことん奥手というものであった。


翌日。
あの喫茶店の中で、一番腹に溜まりそうなメニューはなんであったろうなどと考えながら、甲村は昼下がりの陽光の中を歩いた。
やはりこの日も気温が高く、喫茶店に向かうまでの短い道のりでさえ、額にじわりと汗が滲むほどであった。

この時期は『楽園』とさえ思える、冷房によって作り出された快適な空間へと通じる扉を、汗ばんだ手で開く。
甲村の姿が現れたことに気がついたのか、笹原がおーいと声をあげる。

笹原が陣取っていた席は昨日のそれと全く同じであった。
偶然とは重なるものだと思いながら、甲村は笹原の向かいに腰を落ち着ける。

「笹原と二人っきりっていうのは、珍しいな。」

少しからかうつもりで甲村は言う。

「うん。そうだね。でも、これは陽一にしか相談できないことだし。」

笹原は、少し顔を赤らめて返す。
親しくなり始めてすぐに、笹原は甲村のことを下の名で呼ぶようになった。
甲村は、特に理由があったわけではないが、下の名で呼ばれる機会があまりなかったため、変な気分になったものだった。
だが、それよりも変だったのは、笹原は甲村を「陽一」と呼ぶというのに、園田に対しては「園田君」のままだったのである。

それは園田自身気にしているところで、昨日の会話の中でも、

「俺より甲村のほうに興味があるのではないか」

とか、

「近寄り難く思われているのではないか」

とか、いろいろと思案しているようだった。



あれこれ思い返していると、店に入り際に頼んでおいたコーヒーが、テーブルへと運ばれてきた。

甲村がそれを昨日のように、少し得意気なポーズで啜っていると、笹原が何か言ったようだった。
普段快活な笹原にしては、随分と口の中で篭るような発音で、何かそわそわしているようでもある。

「悪い。聞こえなかった。
 隠さんでいいから、もう一度言ってみてくれよ。」

甲村はどことなく上からの目線で言って、もう一度コーヒーを啜る。
そうすると、今度ははっきりと、しっかりと耳へと届く声で、笹原が言った。

「私さあ、園田君に惚れてしまった。」

なんということであろうか。
甲村は、昨日と全く同じ動きで、コーヒーを卓上へと散らした。
昨日とは逆側に座っているという違いはあったが、あまりにも目立つその行動に、店員は怪訝な表情を露骨に甲村へと送った。

ごほごほと咳き込む甲村が静まるのを待って、笹原が口を開こうとしたとき。
甲村は笹原の発言を手で制して、先にこう言った。

「笹原は、必ず園田を尻に敷くだろう。」




昨日と同じ帰路を辿って、住処へと還る。
あれからいろいろと話を聞いたり、適当に流しながらおごりであるハンバーグのセットにがっついたりして、夜を迎えた。

未だに胃の中に残る、肉やらポテトやらで、少々腹が張っているので、ソファで横になる。
甲村は、さっきまで話していた笹原の様子を思い浮かべる。


園田とは違い、笹原はそれなりに恋愛の経験値があるらしく、昨日のように甲村がからかうことはあまりなかった。
しかし、話の中で笹原は園田を「初めて本気で好きになった人」だと表現した。
甲村が、

「今までは好きでもない男と付き合ってきたのか」

と聞くと、

「大学に入ってからは、将来も視野に入ってくるの」

だと、訳のわからないことを答えとして渡した。
変に意地になった甲村は、女というものはそんなにドライなものなのかという疑問もぶつけてみたが、さらによく分からない理屈で塗り固められたものだから、話の途中で記憶が離脱した。

それならばと、甲村は園田が気にしていたことを質問した。

「なんで俺に対しては『陽一』なのに、園田に対しては『園田君』?」

近しい人物に下の名が『けいた』の人がいて呼びづらいとか、そんな安易な答えを期待した甲村であったが、

「恥ずかしくて名前で呼べない」

などと、笹原は顔を上気させて言った。
今度は食べかけのポテトを喉につまらせそうになった甲村であったが、なんとかそれを乗り切り、笹原の様子を伺う。

冗談などではなく、いたって真面目な顔をしている。
誰に対してもすぐに馴染んでしまう彼女が、ここまで恥らうとは。
甲村はただ意外だと思って、話の受け手にまわった。

それからは笹原から園田の良いところだのを延々と聞かされることになった。
あの紳士的な園田が、特別な意識を持って笹原に応対しているのだから、笹原が「もの凄く親切」というのを園田の良いところとして挙げるのは当然のことであった。

そんな笹原であったが、去り際に、

「このことは私と陽一の秘密だからね。絶対に喋っては駄目」

と、甲村へ言った。
さて、昨日同じような釘を刺されたと思いながら、甲村は

「伝えないとなにも始まらないだろう」

と笹原に提案してみた。すると、

「今回は本当に慎重にいかないと駄目なの。園田君、私に対して『友達』意識強いだろうし」

甲村は、なにやら面倒なことになってきたと感じながらも、結局は頷いて、こうして還ってきた。





もの凄く中途半端ですが、今回はとりあえずここまでで。
甲村の話はほとんど書き終わっているのですが、更新ペースをできるだけ乱したくなかったので、こんなとこで切ってしまいました。
これでもどこで切るか悩んだのですが。汗
まだ評価など出来ない状態だと思われますが、なにか思うところがあればコメントをいただけると嬉しいです!
次の更新は火曜日か、水曜日に。(もの凄く稀ですが、予定が前倒しになる可能性も)




【次回キーワード】
揺らぐ 亀裂 あのお方登場 終了

ツーヨンさんの次回予告を真似させていただきました。笑
あんまり上手いことできませんでしたが・・・。

それでは。次は 【FILE1】甲村陽一の場合② です。少しだけお楽しみにっ。

悲劇のルーツ。
「No.2 口径 is 9mm」

 NEXT→
【FILE1】甲村陽一の場合②

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