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2009/06/13 (Sat) ラルス・カヌス まえがき

俺は普通の体ではなくなった―。病院で出会った、同じ境遇の仲間たち。閉ざされた未来を感じたとき、彼らはあるものを目指す。

ツーヨン様より ラルス・カヌス
イラスト:ツーヨン様

去年の夏の終わりに、自分でもびっくりするくらいのスピードで書きあげたこの作品ですが、このブログにはずっと転載してなかったんで載せます。

この小説はたった一人の読者が楽しみにしていてくれたからこそ完成できたのであり、決して黒目単身で作り上げたものではありません。

稚拙なりにも、脳内妄想から、小説という形になりえたのは、そんなひとりのおかげです。
遅すぎる感謝だけど、あのときは、本当にありがとう。

それからはコミュニティサイト等にも投稿し、非常に沢山の人に読んでいただくことができました。

内容はどうであれ、自分にとって本当に価値のある作品です。

(6/18)ツーヨンさんに描いていただいたイラストをこちらにも掲載させていただきました。
      ツーヨンさん、素敵なイラストありがとうございます!


全5話の物語ですが、長さとしてはたいした量ではありません。
それでは、どうぞ。

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2009/06/13 (Sat) -1- Z棟

-1- Z棟



   ‐ラルス・カヌス‐


人間の体は、なんとも不思議なものだと俺は思う。
ほとんど同じ時間に行動し、同じ食事をし、同じように笑う。
誰がどう見たって代わり映えのない生活。
そんな生活を送っていた人間の体が、突然壊れてしまうことがある。
理由なんてない。
神様というやつが、ほんの暇つぶしのつもりで壊してしまったのかもしれないし、自分の周りにいた幽霊というやつが、友達欲しさに壊そうとしているのかもしれない。

とにかく、俺は普通の体ではなくなった。

俺は、いたって平凡な高校に進み、いたって平凡な大学へ進んだ。
そして、いたって普通の成績で教習所をクリアし、自動車免許を手に入れた矢先。
急に体調が悪くなり、悪くもなく、良くもない平凡な仲である家族に病院へ連れていかれ、何も分からぬまま入院。
今思えば、俺の人生の中で、唯一「異常」と言えるのは、俺の体だけかもしれない。
一週間の入院の後、俺は手術もしないまま、普通の病棟とは少し離れた病棟に移される。
病名など知らない。どこが悪いかも知らない。
でも、正直俺は、あまりにも平凡な俺の人生にうんざりしていて、この病との遭遇に少し胸の高鳴りを憶えていたのである。
この思想自体もう「異常」かもしれないけれど、これからの出来事は、俺の人生の中で、いままでの平凡さからの反動で来た、「異常」のピークだったのであろう。


<1> ‐Z棟‐

俺の腕に、常に点滴がつくようになった。
今日から新しい病棟へ移る。
恐らく俺の体はかなり悪い状況なのだろう。
それでも、俺は平気だった。
この先なにが起こるかわからないこの状態が珍しく、迫っているはずの「死」には全く意識がなかった。
いつの間にか眠っていて、起きれば、既に新しい病棟。
静かにベッドの横に立っていた看護士から、いくつか説明を受けたが、半分は聞き流していた。
最後のほうに、「病棟内ならば、自由に行動していただいてかまいません」と言われ、不思議に思う。
この前は、ベッドから全く出られなかったのに、新しい病棟ならOK?
俺の体は、むしろ快方に向かっているのではないか。
それはそれでいいかと思い、考えるのを止める。
「それでは…」と、去り際に、看護士が俺の手首に黒いテープを巻く。
触ってみて、簡単には切れない素材だとわかる。
「これは、この病棟の患者様だという印なので、はずさないようにお願いします。」
淡々と説明を終え、病室を出て行く看護士。
(はずさないようにと言われても、これははずしようがないだろ…)
手首に巻かれたテープを見つめる。
何も模様がない漆黒の黒。
当然大した面白味はなく、興味も薄れていく。
俺は、病室の外へ出ることにした。
入院前と全く狂いのない感覚でベッドを起き、外へ出る。
真っ白だった。
清潔といえば清潔な印象を受けるが、あまりにも白ばかりで目が疲れる。
廊下を少し進むと、なにやらにぎやかな声が聞こえる。
少し広間があって、休憩所のようになっている所に、男と女が二人ずつ座って談笑していた。
みんな、先ほどの黒いテープを手首に巻きつけていた。
患者なのは分かるが、元気すぎる。
やはりここは、もう退院間近の患者が来るところなのだ。
四人の内、一番大声で笑っていた男が、こちらに気付いて声をかけてきた。
「おお、お前新入りだろ?一緒に話さね?どうせやること無いっしょ。」
軽い。ノリが軽い。
「ああ。別にいいよ。」
…あっさり受けてしまった。
(まあ、いいか。どうせ暇だし)
男に手招きされるまま、もう一人の男の横に腰掛ける。
テーブルを円く囲うように五人が座る。
「んじゃ、自己紹介からいこっか。
 …俺は、ダイスケ。フツーの名前で覚えやすいっしょ?よろしく。」
勝手に男が司会をしている。別にいいけど。
「僕は、康太郎。みんなコウって呼ぶから、コウでいいよ。よろしく。」
「私は、マコ。元気ありあまっちゃって、どついたりするかも知れないけど、よろしく。」
続いて残りの男と、片方の女が自己紹介する。
ここでは普通かもしれないが、こうも一気に言われると疲れる。
マコ?は、「よろしく」を言い終わった瞬間に、もう俺の肩をたたいていた。
俺が自己紹介をしようかと思ったら、前の女が声を出した。
そういえば、この女のことを忘れていた。
みんなが騒がしくするものだから、もうみんな一気に自己紹介を終えたものだと勘違いしてしまったのだ。
「……。私は…アヤ。しゃべると疲れるから、あんまりしゃべらない。…よろしく。」
この女は静かだった。
見てみると、みんな自分とそれほど歳は離れていないようだった。
むしろ、自分が一番年長者かもしれない。
みんなの視線が集まってきて、はっと気付く。
今度は自分の自己紹介を忘れていた。
「あ。えっと…俺は、秀一。シュウでいいよ。…よろしく。」
(こんな感じでいいの…か?)
一瞬の静けさに多少焦ったが、すぐにみんな笑顔を向けてくれた。

自己紹介を終えただけで、みんなは俺を仲間だと認めてくれたみたいだった。
さっき初めて見たはずの人物に、どんどん話題を振ってくる。
話の内容はいたって普通で、芸能界の話や、スポーツの話など、違和感は全く覚えなかった。
この病棟内では、ほとんど一緒にこの四人は過ごしてきたようで、その輪の中に加わることができるのは素直に嬉しかった。
みんなもう俺のことを、「シュウ」と気軽に呼んでくれて、話が苦手そうなアヤも、あだ名で呼ぶことに抵抗は全くないようだった。
話していると、大体みんなどんな人物なのか分かってくる。
軽いノリで、場の雰囲気を常に明るくしてくれる、自称イケメンのダイスケ。
ブラックなジョークをやたら連発するけど、本が好きらしく、物知りなコウ。
どんなことにも笑ってくれて、少々強めのツッコミを乱発するマコ。
少し口数が少ないけれど、時々小さく笑って、みんなを癒すアヤ。
四人とも素敵だった。
いままで会った人達の中で、この四人とは凄く仲良くなれそうな気が、なんとなくだけれど、確実にしていた。
俺みたいな人間が、この四人に加わっていいのかと不安に思うぐらい、みんなとの会話は楽しくて、ほんの一時間の会話が、俺の平凡ないままでの人生よりよっぽど価値があるのではないかと思った。

それでも、一つだけ気になること。
みんな、この病棟に移ってから知り合ったのだろう。
こちらに移ってからの話しかしていない。
過去を、語らない。
病人なのだから、当然なにかしら原因があってここにいるわけで、過去の話をするのは嫌なのかもしれない。
俺は疑問に思ったが、今のこの五人の仲に過去は関係ない。
本当に仲良くなれそうなだけに、知りたくもあったけれど、俺は聞かないようにすることにした。
(きっとこうやって暗黙の了解みたいなのが守られていくんだろうな。)
そう思っていると、マコが俺に、
「シュウは体、どこが悪いの?」
と、あっさり聞いてきた。
過去はNGでも、現在の話題はどんなものでも問題ないらしい。
「うーん。俺、なんも聞かされてないから、分かんないんだよね。
 まあ、こっちに移ったから、大丈夫だとは思うけど。」
そう答えると、みんなキョトンと目を丸くしている。
何言ってんの?という顔だ。
「ん…どうしたの?」
少し怖くなって、咄嗟に前にいたアヤに聞いてしまう。
「シュウ…、なんで、大丈夫だと思ったの?」
アヤが、ゆったりとした口調で、質問で返してきた。
「え……だって、ここって退院間近の患者がくるトコじゃないの?
 みんなフツーに元気だし…。」
俺は、思っていたことをそのまま言った。
少し空気が固まって、わずかだけれど沈黙が生まれた。
すると、ダイスケがわざとらしく溜め息をして、俺に言った。
「この病棟、なんて呼ばれてるか知ってるか?
 Z棟だよ。ズィー棟。
Aから始まってZで終わる、アルファベットのZ。
この後はもうないですよー、ってこと。」
淡々と口にし、一拍置いて言った。
「つまりな…。
 この病棟に連れてこられたってことは、もういろんな病気の末期ってやつで、助かる見込みがないってことだよ。
 このテープ、前ここにいた人なんか、『死の輪』って呼んでた。
 もう諦めなさいって印。」

「よくしゃべる口だな。ガーゼ詰め込んで、包帯で塞いでやろうか。」
「へっ。やれるもんならやってみろや。」
「看護士さーん。」
「おいっ!」
コウは急に知らせるのはまずかったとでも思ったのか、わざとふざけて、この場を和ませようとしてくれた。
けれど、急に俺の耳に届いた、ほとんど死亡宣告に近いこの事実に、俺は小さくはない目眩を、確かに感じていた。

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2009/06/13 (Sat) -2- 陽の下へ

<2>  ‐陽の下へ‐

Z棟に移って一週間。
みんなと知り合って一週間。
ダイスケから聞かされた事実に軽いショックは受けたけれど、今はもう平気だった。
何も病気を負わずに、平凡に命を長引かせるよりも、みんなと短い間でもいいから、笑い合っていたいと、そう思えた。
まだ、知り合ったばかりだというのに、自分がこんな気持ちになれるなんて、本当に不思議だった。
あっさりと事実を述べたダイスケは、後でコウに諭されて、少しすまなく感じていたようで、俺と話しにくそうにしていた。
けれど、いつもマコがやるように、思いっきり背中を叩いて、「気にしてないから」と笑顔で言ってやると、いつもの軽いノリで楽しませてくれた。
みんな、本当にいいやつだ。


薬が届く時間。
仕方なく、俺は病室に戻る。
薬を飲む瞬間だけは、俺にはっきりと病気の存在を認識させてくる。
普段からつけている黒のテープは、もう見慣れてしまって、あまり「病人」だという意識を呼び起こさせる物にはなりえなかったけれど、この瞬間だけは、いつまで経っても慣れることはないだろうと思った。
看護士が入ってくる。
銀色のトレイに沢山の錠剤がのせられている。
(少し、薬の量、増えてないか…?)
今まで見たことのない色の錠剤が、一番奥の方に見えた。
看護士は、俺の様子に気付いているはずだろうに、なにも説明もせず、表情を変えないまま、淡々と作業をこなしていく。
結局、この日から、俺の薬は二種類増えた。


全部薬を飲み干し、点滴を付け替えてもらってから、病室を出る。
あんな部屋の中に閉じこもっていたら、気が狂う。絶対に。
昨日見た音楽番組に出ていた、俺の大好きなスウェーデン出身のバンドの話がみんなにしたくて、休憩所に向かう。
相変わらず廊下にまでダイスケの声が聞こえてきて、自然と笑みがこぼれる。
「よっ。」
小さく声をかけて、テーブルに近づいていく。
すぐに、気付いた。
「あれ?……アヤは?」
何も考えず、口にしていた。
「え…うん。いま、あの子調子悪いみたいだから…。」
いつもがさつなマコが、答えにくそうに言った。
「あ…そっか。」
自分にしか聞こえないぐらいの小さい声で、俺は情けなく相槌を打った。
ショック、だった。
この病棟の意味を知ったときよりもショックを受けた。
当然、みんな病人なのだから、いつ調子が悪くなるのは当たり前だ。
調子が悪くなるどころか、死んでしまうことだって…
そこまで考えて、頭を振る。
とにかく、この仲良し五人組の中から、誰かが欠けているのを初めて見た俺は、言いようのない不安を覚えていた。
それに、俺は昨日のバンドの話を、アヤにしてやれないのが何故かすごく悲しかった。
話している中で、アヤが音楽をよく聴くのは知っていた。
その音楽の好みが俺に近かったから、きっと昨日のバンドも好きに違いないと思って、ずっと話したかったのだ。

みんなは誰かが欠けているこの状況を、何度も味わっているのかもしれない。
いつものように休憩所のテレビを見て、笑い合ったりしている。
俺は、そんなみんなが、誰かが欠けることに平気そうに見えて、腹が立った。
けれど、みんなの様子を見ていると、すぐに強がっているだけだと分かった。
誰かがいないときに、ただ気分を沈め続けても、良くなるわけではないし、体調を崩した方も悲しむ。
そう悟ったみんなが考えた、精一杯の強がりなのだろう。
だから、俺も心の中ではアヤの無事を祈り続けながら、いつものように軽くジョークを飛ばす。
昨日のバンドの話は、アヤが来るまでとっておくことにして。


次の日。
朝一番で飲み干さなければいけない薬の山を、複雑な気持ちで飲む。
アヤの調子はどうなのだろうか。
そればかり考えてしまう。
思えば、みんなの病室の場所は全く知らなかった。
最後の一粒まで飲み干し、少し気分が沈む。
流石に、朝からこの量はキツイ。
それでいてこの精神状況なのだから、自然と顔色は悪くなっていただろう。
看護士が一言二言、体調について聞いてきたけれど、俺は大丈夫とだけ繰り返していた。
看護士が出て行った後、ゆっくりベッドから出る。
少し自分の体が重く感じた。
絶対、体重など増えていないのに。
病室から出て、いつものように廊下を歩く。
いつもより少しだけ静かな気がしたけれど、ダイスケとマコがふざけあっている声が聞こえた。
廊下が広くなっていき、並んだテーブルが目に入ってくる。
みんなが座っているテーブルの周りに、アヤはまた、いなかった。
明らかに落胆の色を見せる俺に、ダイスケが声をかけてきた。
「よっす。どした、元気ないな。変なモンでも食ったか。」
「こんな病棟内じゃ、へんなモンが口に入ることはないよ。」
いつもの自分らしく振舞おうとする。
けれど、分からなかった。
(俺って、いつもどうやってしゃべってたっけ…)
胸の中にある、痛いような苦しいような喪失感。
情けないくらいに小さくなる俺に、今度はコウが話しかけてきた。
「シュウ、あれか。恋煩いか。
 そんな寂しがっても、想い人がやって来るわけじゃないぞ。」
こんなときに。アヤは大変かもしれないのに。そうやってからかうのか。
そう怒ろうとしたけれど、いつの間にか俺は、顔を真っ赤にして、「そんなんじゃないって」と必死に否定していた。
みんながやらしい目線を飛ばしてくるせいで、慌てて否定し続ける俺。
コウは、ちょっと元気になった?とでも言うような顔をしている。
…わざとか。
(俺って単純なのかな…)
少し悲しくなったけれど、俺が恋愛に疎いとか、そんな人間性は、もうみんな分かってしまっているのだろうと思った。
「シュウ、大丈夫だよ。あの子、時々こうやって体調崩すけど、何日かするとまた朝一番に来て座ってんだから。落ち込まない、落ち込まない。」
「……そっか。」
優しく教えてくれたマコの言葉に少しほっとして、イスに座る。
すると横からダイスケが、
「やっぱアヤのこと好きなんじゃん?」
「ちっ、違うって。」
「顔真っ赤だし。さっきマコに言われて安心してたし。」と、コウ。
「うっ、うるさい。」
少し照れくさかったけれど、みんな落ち込んだ俺を励まそうとしてくれた。
やっぱりいいやつらだと、改めて思った。


それから何日か過ぎて。
俺たちはいつものように過ごしていた。
けれど、アヤは戻ってこない。
マコは、大丈夫だと言い切ったこともあって、必死に不安に思わないようにしているようだけど、どうしても寂しい表情をこぼすようになっていた。
ダイスケも、コウも、俺も、一緒だった。
誰かがいなくなってしまうかもしれない、よどんだ不安が胸を満たしていく。

アヤの顔を見なくなって二週間。
精一杯の強がりもほとんどできなくなってきた頃。
何故かいつもよりかなり早く目が覚めた。
この病棟に来て、いつも起きる時間には数分しか狂いがなかったのに。
朝の薬を飲む時間まで、まだ二時間もあった。
どうせ目が覚めたのならと、俺は病室を出て、休憩所へ向かう。
まだ陽の光は弱く、いつもは眩しい廊下の白も、それほど映えていない。
音が、聞こえた。
休憩所のテレビが点いているようだ。
不思議に思って近づいていく。
休憩所の真ん中のイスに、ちょこんと小柄な影。
アヤだった。
俺は最初信じられなかったけれど、すぐに固まっていた心がほぐれていく気がして、自然と笑顔になっていた。
声をかけようとして、そういえば二人きりは初めてだ、などと余計なことを意識している内に、アヤがこちらに気付いた。
「…あ。シュウ。おはよう」
いつもの、ゆったりとした口調。
二週間も顔を合わせていなかったというのに、全く普段と変わらない挨拶をしてきた。
「うん。おはよ。」
だから、俺も普段通りに挨拶で返した。
隣に腰掛ける。

二週間、本当に心配した。
みんな不安に思っていた。
ずっと、ずっと待っていた。

あの有名な女優が結婚した。
俺の応援している野球チームが連勝中。
ずっと話してあげたかった俺の大好きなバンド。

沢山、あった。
たった二週間会えなかっただけで、沢山話したいことがあった。
けれど、俺はなにから話せばいいかわからなくて、黙ってしまう。
アヤは、そんな俺に優しく笑いかけたあと、小さな音をもらしているテレビに向き直った。
ずっと、沈黙が続いた。
だけど、二人の間には優しい空気が流れていて、親しい仲だと、沈黙も全然苦にならないものなのだなと、俺は感じていた。
俺は急に眠たくなってきて、座ったまま目を閉じる。
暖かな涙が一筋、頬を伝っていたけれど、気にならなかった。


少し強くなった日差しが顔に当たって、目が覚めた。
瞼を開くと、いきなりマコの顔が視界に入ってきて驚く。
「よく眠れたかね。秀一君。」
なんだ、そのしゃべりかた。
つっこんでやろうかと思ったけど、すぐにまたマコが口を開く。
「やっとアヤが戻ってきたと思ったら、なにやってんだい、あんたら。」
アヤ。そうだ。いつもより早く目が覚めて、休憩所に来たら、二週間ぶりにアヤに会って、それで……
横にはダイスケとコウもいた。
二人とも、俺と俺の少し横をチラチラと見ている。
なにやっているかと疑問に思っていると、今度はやけに肩がこっているのに気付く。
肩のあたりに重みを感じる。
気になって隣を見ると、アヤが俺に、もたれかかるように眠っていた。
「…。」
一瞬、思考回路が遮断される。
一秒。二秒。三秒。
「…………!!」
俺は、声にならない悲鳴をあげるので精一杯だった。


その後。
マコがアヤを起こして、アヤはいつもどおりで。
ダイスケとコウに、俺がさんざんいじられている所に、看護士が来てみんなを病室へと引きずっていった。

今日は、違う意味で精神状況がおかしい。
目の前の薬の山を、複雑な気持ちで飲む。
「……ふう。」
全部飲み干した後、看護士が点滴を付け替えながら、俺に言った。
「早朝は、体調が崩れやすいので、極力病室からは出ないようにしてください。
 それに、あまり宮沢さんに負担をかけさせないよう、お願いします。
 宮沢さんは、最近やっと体調が戻ってきたところなので…」
この歳になって、怒られてしまった。
(アヤ、宮沢っていうんだ…。というか、最近調子よくなってきたってことは、やっぱり今まで悪かったってことか。大丈夫なのかな…)
考えていると、いつの間にか看護士は病室を出ていたので、自分も休憩所へと赴く。
さっきまでいた休憩所に、もうみんな集まっていた。
みんなアヤを取り囲んでわいわいしゃべっているけど、アヤはいつものようにまったりとしている。
遠くから、その様子を見ていると、
「なににやけてんだよ。こっち来いよ。」と、ダイスケ。
アヤもこちらに気付いて、笑いかけてきた。
少し恥ずかしかったけれど、アヤは全然気にしていないようで、少し傷つく。
近づいていき、改めてアヤの様子を見てみると、異変に気付いた。
アヤの腕はわずかだけれど細くなっていて、顔も少し痩せているようだった。
先ほどの、看護士の言葉が頭に浮かぶ。
『宮沢さんは、最近やっと体調が戻ってきたところなので…』
胸の奥が、きりきりと軋んでいるみたいに痛かった。
少し目線を下げて胸の痛みに耐えていると、バンッと背中を叩かれた。
横を見ると、マコが小さくガッツポーズを作って、力強く笑っていた。

みんな、分かっているんだ。
それぞれ、重い病をその身に負っている。
それでいて、なんて強いのだろう。
(俺も、もっとしっかりしなきゃな。)
グッとこぶしに力を込めて、アヤに向き直った。

テレビを時々見ながら、くだらない話題で盛り上がる。
ダイスケがふざけて、コウがたしなめ、マコがその様子を見ながら大声で笑う。
俺がたまにツッコミを入れて、その横で小さくアヤが笑っている。

いつもの、五人だった。

しばらく談笑して、話し疲れてくると、テレビを眺めながらの、優しい沈黙。
みんな五人で一緒にいられることの幸せを噛み締めているようだった。
昼間のテレビ番組は穏やかで、自然の特集をしている。
山から場面が切り替わって、海が映された。
どこまでも続く蒼の上を、気持ちよさそうに飛ぶ影。
それを見て、アヤがはっと口にした。
「あ…。あの鳥…」
目が輝いている。
俺も画面をジッと見てみる。
「カモメ…か?」
「カモメ……。」
アヤが、愛しそうに口にする。
そんなとき、コウが横から言った。
「あれは、ユリカモメだね。
 日本産のカモメには、オオセグロカモメとか、シロカモメ、ウミネコなんかがいるね。
 渡り鳥で、神奈川県の県鳥にもなってる。
 けっこう人懐っこくて、あの『かっぱえびせん』なんかでも、餌付けできちゃうんだ。
 学名は……えっと、なんだったっけな…。」
「コウは…やっぱり、物知り、だね。」
アヤが感心していた。
「聞いてもないのに、勝手に解説始めるけどな。」
と、笑いながらダイスケが言う。
俺は、得意気に語ったコウが、アヤに尊敬の眼差しを向けられているコウが、何故か無性に羨ましかった。
(カモメか…後で、こっそり調べておこうかな)
そんなことも考えるくらいだった。
テレビはなにも語らず、ただただ蒼の世界を飛び回る、白いカモメの姿を映している。
とても、気持ちよさそうだな、と思った。
「カモメ…。」
またアヤが目を輝かせながら、カモメを呼んでいる。
「……見てみたいな。」
ぼそっと、アヤが言った。
その様子を見て、俺は思いついたことを、咄嗟に口にしていた。

何故、急にそんなことを考えたのか分からない。
今まで、俺が平凡なことしかしてこなかったから、その反動なのか。
この五人でいられる時間がなくなっていくのを、病が蝕んでいく体の何処かで感じていたのか。
とにかく、俺がこの計画を口にしたときから、この五人の人生は、大きく変わっていったのだろう。

「見に、行こうよ。カモメ。」
みんな、キョトンとしている。
この病棟に来て、俺がここは退院間近の患者が来る所だと、勘違いしたときと同じ顔。
「こんな病棟飛び出してさ。
 あんな広い世界目指して。
 みんなで…見に行こうよ。カモメ。」
みんなまだ目を丸くしている中で、アヤだけが目をキラキラさせている。
「アヤも見たいだろ?カモメ。」
「…うんっ。」
アヤにしては珍しく、強く頷いた。
またあの看護士の言葉が頭をよぎったけれど、だからこそ、行かなければいけない気がした。
限られた生命。閉ざされた未来。
そんな中で、少しくらいの光は目指してもいいんじゃないか。
だから、俺はこの病棟から脱出して、海を目指す計画を考えた。
それがどれだけ無謀なことか、入院前と寸分変わらぬ感覚を保っていた俺には、分かるはずもなかった。

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2009/06/13 (Sat) -3- 背に負う過去

<3>  ‐背に負う過去‐

俺が突然言い放った計画は、当然すぐに行われることはなかった。
いつも軽いダイスケもマコも、真剣な俺を見て、いつものように茶化すことはなかったけれど、計画には賛同しようという気にはならないようだった。
みんな、無謀なことはよく理解している。
毎日飲まなければいけない薬、腕につけられた点滴。
俺自身、今は平気でも、これを絶ったら、いつか必ず倒れるのであろう。
そんなこと、俺だって十分わかっていた。
以外だったのは、冷静なコウが少し乗り気だったことだ。
もし脱出したときのことをじっくりシュミレーションして、急に問題点を指摘し始めたのには驚いた。
結局、この日はみんな複雑な表情をしたまま、それぞれの病室へと戻っていった。
アヤだけは、ずっと目を輝かせていたけれど。

俺は病室に戻り、よく脱出計画について考えてみる。
さっきコウがいろいろ言っていた。
この病院から一番近い海の場所だとか、そこまで行く交通手段だとか。
遠出をするにはお金だって当然必要になる。
だけど、その中でも一番の問題はみんなの体調を保つ薬のことだった。
俺はアヤにカモメを見せてやりたい。けれど、俺自身も病人だということを、決して忘れてはいけない。
考えれば考えるほど、この計画は無謀だった。
病人5人で、海を目指して病院を抜け出す。
確実に、無事で済む旅ではないだろう。
この病棟を出ること自体不可能かもしれない。
そんな状況でも、何故か俺はこの計画を思いついた時点で、これは自分に科せられた使命なのだと思っていた。

次の日、みんながまた休憩所に集まる。
アヤだけが、いなかった。
まだ体調が安定していないのだろうか。
昨日、計画を提案したときは、あんなに目を輝かせていたのに。
不安がまた込み上げてきたけれど、近づいていくと、マコが、少し薬が強くなって睡眠時間が長くなっているのだと教えてくれた。
少しほっとしたものの、それは病気が進行しているということだ。
胸の奥には、不安が残ったままだった。

昨日の計画のことを考えているのだろう。
それぞれ、複雑な表情。
いつもあるはずの笑顔がないこの状況を、自分が作り出してしまったことに、胸が痛んだ。
少し沈黙が流れた後、ダイスケが咳払いをして言った。
「シュウ…。脱出するって計画のことだけどな…。
 俺達も、考えたことがあった。」
驚いた。俺と同じ考えを持っていたのか。
「何かを見てみたいとか、そんな目的はなかったけど…
ずっと気が狂いそうだった。
 俺達は、かなり長い間ここにいるからな。
 ……みんな、ばらばらだったんだ。
今よりも、体調が悪くて、笑い合うこともなくて。
 こんな病棟にいるからだって決め付けて、自分達の弱さに気付いてなかった。
 けど、みんなで集まって笑ってると、体調も良くなったし、毎日が楽しくなった。
 こんな場所でも、生きる方法を見つけたんだよ。」
初対面の俺にも、全く違和感なく接してくれたみんな。
その笑顔の中には、苦しい過去があったのだろう。
俺は、一番幸せなタイミングで入院して来たのかもしれない。
「もうこの先長くないことは分かってる。
 けど、残った時間を、何もなくても、その何もない時間を幸せに過ごすための術を手に入れたんだから、それでよかった。
 そんな中にシュウが来て、もっと賑やかになって、このまま笑っていられると、そう思ってたんだよ。」
ダイスケは、いつもより少し低い声で語ったあと、俺の目を見て、最後に聞いた。
「ここにいれば、終わりまでは笑っていられる。
 それは俺達が保証してやる。
 それでも…それでも。
 行きたいか。外へ。
 見せてやりたいのか。アヤに。」
ここに、アヤはいない。
頭の中で、「死」の文字が迫り来るのを感じた。
俺は、言った。
「行きたい。
 見せてやりたい。アヤに。
 俺だって長くないんだろう。
 なら、せめて誰かを笑顔にさせてやりたい。
 今よりも、もっと、もっと。」
何も、考えていなかった。
ただ、弱っていくアヤの姿だけが俺の思考を支配して、いつの間にか言っていた。
真剣な俺の顔。
それを無表情で見つめるダイスケ。
すると、ダイスケが二カッと笑って、言った。
「カッコイイな、お前。
 いいよ。その計画。俺達も乗る。
 それだけの決意があれば、何とかなるかもな。
 ……よかったな、アヤ。」
(へ?アヤ?)
「何言ってんだよ。アヤは病室…」
と言いかけとき、テレビの陰から、アヤが出てきた。
顔が一気に熱を帯びてく。
「これは当然の報いなのだよ、秀一君。」
また、それか。
「アヤが戻ってきたところを、いきなり一人占めしたのだから。
 アヤはみんなの癒しっ子なのだよ。」
コウとマコが、フォフォフォと笑いながら言う。
流石のアヤも、俺の告白じみた決意の言葉に、顔を赤らめていた。
「あのとき、散々いじってたじゃねーか!
 というか、ダイスケが珍しく真剣にいい話してたのに、なんか台無しになってんじゃん。」
「いいんだよ。あの話は本当だけど、重い話もドッキリに使っちゃうのが、俺たちのクオリティーさ。」
ウインクしながら、親指をグッと立てて言う。
全然カッコよくない。

その後も、顔を赤くしたまま、ギャーギャーと騒ぐ。
みんな笑顔で、俺の計画には賛成してくれているようだった。

けれど、俺の責任は重大だった。
折角みんなが作り上げた幸せな空間から、危険な場所へと連れ出そうとしているのだから。
気を引き締める俺に、コウが言ってくれた。
「みんな、同じ気持ちだったんだよ。
 このまま終わっていくのは、なにか寂しく思いながらも、笑ってきた。
 一度止めた計画を、もう一度やろうって言い出すのは難しいしね。
 感謝してるよ。
 僕も、アヤにカモメを見せてあげたかった。」
(……コウも、アヤが好きなのかな。)
そんなことを思ったけれど、聞かないことにした。
「アヤって、前からカモメに興味持ってたのか?」
と、代わりにコウに聞いてみると、
「うん。なにがきっかけかは知らないけど、テレビにカモメが映ると、いつも釘付けになってたよ。朝早く起きるのも、毎日やってる、五分くらいの短い自然特集見るためみたいだったし。」
そうだったのか。知らなかった。
まだまだ、アヤのことも、みんなのことも、知らないことがあることを感じて、少し悔しく思った。



早速、俺達は準備を始めた。
言いだしっぺの俺より、コウの方が何かと気がつくので、総指揮はコウが執っていた。
金銭面では、何故かダイスケが相当な金額を隠し持っていたのでクリア。
衣服に関しては、とりあえず自分の服が病室に多少あったのでそれを着ることにする。
アヤはこの病棟での暮らしが相当長いのか、患者用の服しか持っていなかったから、脱出後にすぐ買ってやるとみんなで約束した。
周辺の地理は、コウが完璧に記憶していると胸を張っていた。
あとは、海までの交通手段と、それぞれの薬。
薬のことは、みんな分かっていながらも、後回しにしていた。
無理だったとしても、少しの間だけでも、希望を長く持ちたかったから。
「うーん。バスとか電車はこの辺は全くないんだな。」
「おかしいよね。普通病院の近くって、アクセスしやすいはずなのに。」
「まあ、ここはZ棟だからな、病院から余計離れちまってる。」
ダイスケとマコが、頭を抱えて考えている。
アヤは自分の病室で荷物をまとめていて、コウは役に立つものを探すといって、どこかへ行ってしまった。
「こっちの病棟に止めてある車を奪って行くとか?」
「確かに、看護士なんか、こっちの仕事少ないからカギつけっぱにしたりするけどな…
 それ以前に、運転できないだろが。」
「あんなの簡単だって、少しいじればすぐ慣れちゃう、私に任せてっ。」
「マコが運転したら、計画開始と同時に、全員天国行きだよ。」
「はっはっは。面白いこと言うねえ。」
ダイスケが、いつもより強めにどつかれて沈んでいた。
(あ。というか、車?)
「俺、免許持ってるよ。」
思い出し、さらっと、口にする。
「「ええっ!!」」
二人の驚きの悲鳴が、休憩所に響いた。


コウが戻ってきた。
懐中電灯をどこかから持ってきていた。
「どうしたの、やけに楽しそうだけど。」
「コウっ、シュウが車の免許持ってるんだってよ!
交通手段は、車で決まりだな。」
「そっか。よかった。車は最初から使うつもりだったけど。」
「コウ、運転できるの?」
「いや、ゲーム感覚でなんとかなるかなと。」
恐ろしいやつだ。
「まあ、免許持ってるなら、運転はシュウに任せよう。
 あ、そういえば、自分の部屋あさってたけど、予備の薬がいくらか棚の一番下にある鍵付きのボックスに入ってたよ。暗証番号これね。」
そう言って、数字が並んだ紙を差し出す。
「「「……へー。」」」
付き合いの長い二人も、コウの隠された能力に驚いているようだった。


自分の病室に戻って、ありったけの薬を持ち出した後、もう一度休憩所に集まる。
アヤも、戻ってきていた。
両手で、割れ物でも扱うように、ウサギのぬいぐるみを抱えていた。
「アヤ、それ、持ってくの?」
「……うん。友達、だから。」
…友達。そう言ったアヤの顔にはふざけている気などないようだった。
(かなり小さい頃から、ここにいるのかもしれないな…)
そう思うと、悲しくなった。
幼い頃に、終わりを宣告されるなんて、残酷すぎる。
本人は教えられなくても、次々と去っていく、ここの住人達を見ていれば、いずれか悟ってしまうだろうから。
「…可愛い、でしょ?」
アヤが、にっこりと笑う。
そのぬいぐるみは、ところどころ破れかけていたけれど、アヤの胸に抱かれて、幸せそうに見える。
「うん。可愛い。」
そんな様子を見て、自然と笑顔になって返した。
なにか距離が縮まった気がして、一人浮かれていると、いつの間にか戻ってきていたダイスケに頭をペシッっと叩かれた。
「顔、にやけすぎだぞ、秀一君。」
今、ブームですか、そのしゃべり方。
「あと2時間で消灯時間だ。実行に移すのは明日か明後日だな。
 準備が整い次第、出発しよう。」
ダイスケが、窓の外を見ながら言った。
「ああ、できるだけ早いほうがいいな。
 …あ、この病棟から出る方法考えないと。」
「それは大丈夫だ。前計画を思いついたときに、脱出ルートは確認してある。」
「…そっか。いよいよ、だな。」
「…ああ。」
俺とダイスケは、これから飛び出していく外の世界を眺める。
アヤは、一人笑顔で、ぬいぐるみの頭を撫でていた。
そんなところにコウも戻ってきた。
暗くなっていく病棟の中で、これからの旅に想いを馳せる。
しばらくして、アヤが不安げに言う。
「……マコは?」
そういえば、遅い。
「…っ。探してくる。」
ダイスケが、スッと立ち上がる。
見ると、今まで見たことのないような顔をしていた。
思うところでもあるのだろうか。
声をかけようとしたとき、廊下の角から、マコが姿を見せる。
少しフラフラとしながら、こちらに近づいてくる。
安心して、俺はマコに話しかける。
「遅かったな。明日か明後日には出発するんだから、頼むぜ。」
いつもの調子で笑ってくると思って、少しふざけた調子で言う。
「…明日か、明後日?……脱出する、あの計画?」
「なにいまさら聞いてんだよ。当たり前だろ。」
「脱出…この病棟を、出る…。」
何故か、元気がない。やたらと肩で息をしているように見える。
ガクッと膝をついて、さらに呼吸が深くなる。
「…おいっ。大丈夫かよ!?」
「…だめ。…勝手にお外に出るなんて、悪い子…」
「え…?」
何を言っているか分からなくて、戸惑う。
マコは床で丸くなって、とうとう泣き出してしまった。
「悪いことしたら、おばさんが、おばさんが…!
 やめて、怖い。おばさん、やめて…!!」
いつものマコからは考えられないしゃべり方で、泣きじゃくる。
ダイスケが俺をはねのけて、マコを優しく抱える。
「…おいっ。マコ。大丈夫。大丈夫だから…。」
耳元で、優しく語り掛けるダイスケ。
俺は、声が出なかった。
いつもあんなに元気なのに。
なんで…なんで?
何度もマコには励まされたりしたから、この光景は俺にとってショックすぎた。
みんな、病気を、負っているんだ。
分かっている。
それぞれに、暗い過去があるかもしれないことも、いつ体が悪くなってもおかしくないことも。
分かって、いた。
戸惑い続ける俺に、アヤが小さく言った。
「マコはね…、頭の中に、なにか悪いものができちゃったんだって。
 難しくて覚えてないけど…、ときどき嫌な思い出とかが、急に頭に浮かんだりしちゃ     うって言ってた。」
「そう、なのか…。」
「…マコのこと、嫌いにならないで…。」
俺の服の裾を引っ張って、心配そうにアヤが言う。
「…大丈夫。俺が、弱かっただけだから。」
俺は、自分の決意の甘さを痛感し、自分の心に喝を入れる。
とにかく、この状況をなんとかしないと。
看護士を呼びに走ろうと思ったときだった。
さらに、マコの呼吸が荒くなっている。
そんなマコの肩を、ダイスケがグッと掴んで、目を閉じている。
(何しようとしてんだ?あいつ…)
そう思った瞬間、ダイスケはマコへ顔を近づけていった。

…目の前で、二人の唇が重なる。

俺は走り出そうとした格好のまま固まり、コウは精一杯の無表情で見てないフリ。
アヤは何故か、顔を赤らめながらウサギの目を手で隠していた。

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2009/06/13 (Sat) -4- 彩

<4>  ‐彩‐

静かな闇の中俺達は、以前計画したときに見つけた脱出ルートという所を、息を潜めて進む。
避難経路と、関係者専用の通路の、出来るだけ死角を辿って考えられた通路。
さほど大きくはないZ棟だけに、案外あっさりと出られそうだ。
コウが先頭を進み、ダイスケがしんがりにつく体制で、慎重に進む。
昨日の夜、発作を起こしたマコは、いつも通りとまでは行かないものの、元気な顔を見せてくれていた。
(昨日のアレは、びっくりしたけどな……。)
と、頭の中を鮮明なイメージがよぎって、一人赤くなる。
ダイスケはあの後、呼吸のしすぎで、過呼吸になるだとかくだらない言い訳をしていたけれど、アレの後、マコが落ち着きを取り戻したのも事実で。
コウが無表情で、「ま、そういうことなんだろ?」
と聞いたとき、ダイスケは頭をかきながら、首を縦にゆっくり振っていた。
(感じよかったもんなー。あの二人。)
そう思いながら、自分の後ろをトコトコついてくるアヤを見る。
アヤは、これから広がっていく世界を想像して、少し笑みをこぼしているようだった。
なんか、遠足を楽しみにしている小学生みたいだなと、そう思った。
マコがあんなことになっても、翌日こうして計画が実行されたのは、正気に戻ったマコが、どうしても行きたいと言ったからだ。
みんな残された時間を、様々な形で実感しているだろうから、マコの意見に反対する人はいなかった。
不安は、まだまだある。
俺は、一番体力が残されているであろう自分の体が、悪くならないよう祈った。
心さえ強く持てば、きっと俺はみんなの役にたてるだろうから。


病棟の『裏口』と思われる場所に到着した。
夜中なにが起きても、すぐ看護士が駆けつけられるようにか、鍵はとても簡易的なものだった。
コウが鍵を開け、扉をそっと押す。
病棟の中よりも深い闇が、向こう側に見えた。
少しずつ気持ちが高揚していく中、みんな息を殺したまま、外へと足を踏み出す。
やった。
そう、心の中で呟いたけれど、安心はできない。
「車、あれはどうだ?」
小声で、ダイスケが聞いてくる。
アゴで指された、白が少し濁っている軽自動車に近づく。
カギは…開いていた。
体を車内に滑り込ませ、シガーライター下の、ボックスを漁る。
(……あった!!)
こんなあっさり見つかるものなのかと、拍子抜けしながらも、急いでみんなに合図を送る。
みんな音を立てないように小走りをして近づき、同じように体を滑り込ませる。
助手席にはコウが、後部座席にはダイスケ、マコ、アヤの順で乗り込んだ。
パンダのキーホルダーがついたキーを差込み、エンジンをかける。
鈍い振動を響かせながら、車は息を吐き出す。
「…よし、んじゃ、行きますか。」
みんなの顔を見渡したあと、アクセルを踏む。
俺達の希望が、ゆっくり、走り始めた。


病院の敷地内を進み、道路へ向かう。
夜中ながらも、車の量はそれなりにあった。
コウに左を指示されて、ウィンカーを灯す。
少し車の頭を出して、道路に出ようとするが…

…タイミングが、わからない。

思えば、免許をとったあとすぐ入院となった俺は、国道での運転経験はないに等しい。
教習所の練習で走ったりはしたけれど、今は夜中だ。
存在を示す二つのライトが、迫って、遠ざかってを繰り返す。
何台、通り過ぎただろうか。
ウィンカーが灯っていることを教える、カチッ、カチッという音だけが、車内に響く。
「…シュウ?」
コウが、不思議に思って尋ねてくる。
俺は、ほとんど運転の経験がないことを言おうとしたけれど、流石にそれはカッコ悪すぎると思って、思い切ってハンドルをきる。
道路に、出た。
少し急にハンドルをきりすぎたかもしれないけれど、ぶつかることもなく、一安心。
病院付近には明かりが少なく、視界は不安だったけれど、他の車の流れに沿って走っているうちに、段々と慣れてくる。
少し不安げに俺を見ていたコウも安心しているようだった。
「とりあえず、この病院から離れるべきだな。」
ダイスケの声が後ろからして、少しスピードを速める。
「…服。」
アヤがボソッと言ったのが聞こえて、笑って言う。
「大丈夫。忘れてないから。
 それに、今はまだ、店開いてないからさ。」
「……分かってる。」
余りにも子供扱いしているような俺の口調に、アヤはムスッとして答える。
(なんか最近、やけに小さい子みたいな仕草が多かったからな…
 うっかりしてた。気をつけないと。)
珍しく怒ったアヤを見て、少し反省しながらも、俺は小さく笑っていた。

車を二時間ほど走らせて。
コウは数回方向を指示しただけで、後はただひたすら真っ直ぐに進んできた。
未だに俺達を呑み込むように広がる闇は深くて、普段の運転の何倍も疲れる気がした。
車内の時計を見ると、午前二時五十分。
後部座席で、マコとアヤはお互いの頭で支えあいながら寝ていて、コウはずっと地図を広げたまま睨み合っている。
ダイスケはというと、暗くてほとんど何も見えない外の世界を、窓越しに見つめていた。
…無言。
病棟の中での、優しい沈黙とは違う。
みんな、脱出して、それぞれ思うことがあるのだろう。
寝ている二人を起こさないようにしているのもある。
けれど、運転しているこちらからすると、あまりに静かなこの状況は…疲れる。
一刻も早く、海を目指さなければいけないのは分かっている。
ただ、無理は禁物だと思った。
少し、情けなく思いながらも、提案する。
「……そろそろ、休憩にしないか?」
……無反応。
呆れているのかと、少し恐れる。
「で、でもさ。あんまり無理して体調崩すのも…」
段々小さくなる声で訴える。
……無反応。
「……コウ?」
恐る恐る聞いてみる。
「……コウ?ダイスケ?」
……もしかして。
「おーい、コウ!ダイスケ!」
…無反応。
…二人とも、寝ていた。
「…ちくしょ。」
一人で毒づいて、前に向き直る。
ちょっと腹が立ったけど、まあ、仕方ないことだと思った。
みんな、俺よりもキツイ状況だろうから。
(それに、この計画の責任者は俺だしな…)
眠気に負けそうな瞼に気付いて、頬をペシッと叩く。
それから三十分ほど走らせて、路肩に止める。
車内の温度は、暑くもなく、寒くもなく。
この季節でよかったなと思いながら、俺も目を閉じた。


朝。目が覚める。
薬を飲む時間だった。
この感覚は、どこにいてもなくならないのだろう。
自分の持ってきたカバンの中から、錠剤を取り出そうとしたとき。
「…おはよう。」
アヤが、声をかけてきた。
「おはよう。朝、やっぱり目が覚めちゃうな。」
「…うん。癖、だからね。」
「…だな。」
まだ半分寝惚けている状況で、挨拶を交わす。
もうすぐみんなも目を覚ます頃だろう。
薬を、飲まなければいけないから。
自分の錠剤を並べて、ミネラルウォーターのキャップを捻る。
次々と口に薬を放り込みながら、俺は、点滴のことを思い出していた。
あれは、なんだったのだろうか。
自分のどこが悪いのか知らないから、分かるはずもないのだが。
点滴を常につけていたのは、俺と、コウ。
出発前に、コウは自分の点滴を、たいしたものじゃないから大丈夫だと言っていた。
嘘に、決まっている。
(何もなければいいけどな。コウも、…俺も。)
全ての錠剤を飲み干す頃には全員が目を覚まし、挨拶を交わしながらそれぞれの薬を口にする。
車内のその光景は、きっと異様だったに違いない。
最後に起きたのはダイスケで、薬の量はそれほど多くなかった。
ダイスケの病気のことを聞こうかと思ったけれど、今の時間は外の世界にいても、病気を認識させられる時間だ。
余計なことをいって、さらに気分を悪くするのは嫌だろう。

全員薬を飲み終えたことを確認して、車を走らせる。
少し座ったままの尻が痛かったけれど、今は走ることが大切だった。
全然知らない町並みの中を、ひたすら走る。
コウの情報によると、海までの距離はそれなりにあるらしく、無理はしないように言われた。
時刻も午前九時を回って、賑やかになってくる。
店なんかも開いたりしていて、『普通』の空間に、この五人でいられることが嬉しかった。
「ここら辺で、捜そうか、服。」
俺が提案すると、眠そうだったアヤが、少し目を輝かせた。
「あの店でいいんじゃない?もう開いてるし…」
マコが指差した店へ、車を近づけていく。
少し狭い駐車スペースに、そっと車を止める。
(俺、案外運転上手いかも。)
そんなことを思いながら、車を降りようとする。
「…ちょっと待った。」
コウが言った。
「…ん。どした?」
「アヤの服買うのはいいけど、二人以上で行くと怪しくないか?」
なんで?と思っていると、ダイスケが指差した。
「これか。」
黒い、テープ。
「そう。何人もこんなものを手首に巻いてるのは変だろ。」
 確かに。
 みんな地味な格好をしている中で、この黒のテープは似合ってないし、怪しい。
一人だけなら、なんとかなるかもしれない。
そうなると問題は、誰が買いにいくか。
やはり同姓であるマコ、となるところだったけれど、出発前のこともあって、ダイスケの傍にいたほうがいいと判断。
同じ理由でダイスケも却下。
となると、俺か、コウ。
どっちにするか迷っていると、マコが、「ジャンケンでいいじゃん。」と言って、
アヤが、「なんか罰ゲームみたい…」と、少し不満そうな顔。
その後の、ダイスケの「勝ったほうだよな。」という一言の意味を理解した俺とコウは、お互いに顔を赤くしたまま声を張り上げて、構える。
「ジャンケーン……!!」


(……。)
俺は、女物の服が並ぶ、慣れない光景に戸惑いながらも、服を選んでいた。
(アヤに、似合う服か~)
頭の中で、アヤの姿を思い浮かべる。
目の前にある服を着ている姿を、想像して、想像して…
顔は、何故かウサギのぬいぐるみを自慢したときの笑顔だった。
(というか、俺、変態みたい…)
苦悩しながらも、服を選ぶ。
何着も買ってやりたかったけれど、悲しいことに、短い旅だと分かっていたから、アヤに一番似合うと思った服を、一式だけ買っていく。
頭の中では、アヤと一緒に服を選ぶ景色を夢見てしまったけれど、そんな幸せは望んじゃいけなかった。
カモメを見て笑顔を溢すアヤを見ることができれば、それでいいのだから。


少し時間がかかったけれど、俺はやっと車へ戻る。
アヤに、今買ったばかりの洋服を渡す。
洒落た袋の中に、明るめに彩られた模様を認めて、アヤがにっこり笑う。
俺の趣味が全面に出ている気がして恥ずかしかったけれど、喜んでもらえて素直に嬉しい。
すると、今までの患者用の服が嫌だったのか、新しい服が気に入ったのか、急に今から着替えたいと言い出した。
困った挙句、マコがいつもの調子で、「目を瞑れ、野郎共!」と叫んで、男三人は体を小さくして目を瞑る。
後部座席のダイスケだけ、タオルの目隠しつきだった。
少し静かになった車内で、アヤと、手伝うマコの動きが気になる。
ほぼ無音の中に起きる、衣擦れの音を意識しすぎてしまうあまり、顔が真っ赤になっているのが分かった。
(やっぱ変態みたい、俺…)
それからは、ひたすら無心になろうと、頭の中を空っぽにしようとする。
結局、アヤの着替えが終わるまで無理だったけれど。

「もういいよ~」
マコの声が聞こえ、目をそっと開ける。
後ろを見ると、新しい服に身を包んだアヤが、うきうきしながら座っている。
小柄な体に加え、それが細くなっているのだから、少し服が大きく見えた。
それでも、俺にはアヤが一気に元気になったように思えた。
「とても、似合うよ。」
思ったまま、口にしてしまう。
まだ顔を赤らめたまま言った俺に、
「ありがと。シュウ。」
アヤは、笑顔で言ってくれた。
その笑顔は、とても可愛らしくて。どこか、儚くて。
ぬいぐるみを自慢したときと同じくらい、俺には輝いて見えた。


暖かい日差しの中を、白の軽自動車が進む。
車内では、目に飛び込んでくる、外の世界の色彩に、歓喜の声が響き続ける。
みんな、一度は失った空間。
それが、こうして共有できるなんて、こんな素晴らしいことはなかった。
長いドライブも、いつものノリで談笑が続いて、苦になることはなかった。
そろそろ話題も尽きてきて、一段落というときに、ダイスケが
「そういえば、この車音楽とか流せねーの?」と言った。
コウが座席前をいろいろいじった後、
「この車の持ち主は、余り聴かないのかもね。
 カセットとCD聴けるけど、肝心のカセットとかが無い。
 あ、でも、ラジオならあるよ。つけてみよっか。」
そう言って、ラジオのスイッチを入れる。
カーステレオから、陽気なDJの声が聞こえた後、聴き慣れたメロディが響いてくる。
偶然、だった。
俺の大好きな、バンドの曲。
無性に嬉しくなって、流れてくる曲と共に、口ずさむ。
壮大なメロディに、英語だからちょっとしか分からないけれど、力強い歌詞。
一人で酔いしれていると、みんなも口ずさみ始めた。
(なんだ、みんな見てたんだ。あの番組…)
ずっと教えてやりたかったけれど、話しそびれていたバンド。
結局は、みんなで大合唱をしていた。
ミラー越しに見た後部座席のアヤも、小さく口を動かしていた。

その仕草が、とても愛おしく、感じた。

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2009/06/13 (Sat) -5- ラルス・カヌス

<5>  -ラルス・カヌス-

俺はまだ自動車を走らせていた。
もう海への距離はそれほどないだろう。
昼時を過ぎても、俺達は、薬と飲み物以外、口にしていなかった。
多少空腹感はあるものの、気にせず走る。
最初から、食事はしないつもりだった。
食べられる体調じゃないこともあったけれど、もうみんな自分たちの到着点を見据えているようだった。
もう夕暮れに差し掛かるという所で、問題が発生した。
休憩も入れずにずっと走り続けていたら、急にスピードが落ちてきて、車が停止してしまったのである。
車を飛び降りて、コウと俺で車を調べる。
「…分からないな。なんで急に止まっちゃったんだろう。」
「エンジンはおかしくないようだけど…走り、過ぎたか?」
「…原因が分からないなら、どうしようもないな。」
そう言って、車内へと戻る。
マコが心配そうにこちらを見てきたけれど、とりあえず黙ってそのままキーを差し込む。
もう一度、エンジンをかけてみる。
渇いた音が、細かい振動と共に響くだけで、車が動く気配はない。
「…とりあえず、一旦休憩にしようか。」
待ってどうにかなる問題ではない。
けれど、他に方法がある訳でもなかった。
深刻な顔のまま俺は言って、暫く止まった車内で、息をつく。
(…どうしよう。)
みんな、考えている。
残された時間のこと、自分たちの希望のこと、見えてきた旅の終わりのこと。

一時間ほど経っただろうか。
急に咳き込んだコウが、みんなの心配を制してこう聞いた。
「みんなには、悪いけど…我侭、言っていいか?」
みんな、重たい沈黙で答える。
「……。僕、見たい、ものがあるんだ。
 ここまで、一緒に来たけれど、ここまで来られたからこそ、見たいものがあるんだ。
 アヤ、シュウ、ダイスケ、マコ。ごめん。
 僕だけ、別行動でいいから、行かせてくれないか。」
今までの五人が欠ける。
この五人だからこそ、ここまで来られたし、ここまで笑い合えたのだろう。
しかし、カモメを見るために海を目指すことは、共通の目的ではなかった。
アヤの願いを、俺が叶えてやりたかったから。
同じように、みんなはそれぞれに外の世界での希望を持っていたのだろう。
それに、コウの頬は出発前とははっきり分かるぐらいに痩せていたし、目の下には大きな隈もできていた。
どう見たって深刻なその姿を見て、常識なら止めるべきなのだろうが、俺達には止められる訳がなかった。

残された時間が、はっきり分かってしまったから。

ここで引き止めても、きっとコウは幸せにはなれない。
そう思った俺達は、迷いもなくコウの申し出を聞き入れた。
一人コウが車を降りようとしたとき、ダイスケが言う。
「…おいっ。コウ。まだ待ってろ。
 みんなで、記念写真撮っておこうぜ。」
「写真?いいけど、カメラがないだろう。」
コウがあっさり返すと、ダイスケはジャーンと言いながら、黒いカメラを取り出す。
「…なんで、持ってんの?」
驚きながら、俺が聞く。
「車のシート下に落ちてた。
 古い型だけど、撮ることはできると思うぞ。」

みんな一斉に車を降りて、道路脇に並ぶ。
ダイスケが車のボンネットにカメラを置いて、タイマーをセットする。
マコとアヤが前に座って、男三人は後ろで立ってポーズを決める。
ピースサインを出しながら、俺はこれが最初で最後の記念写真だと思って、少し顔を歪ませる。
横からコウが俺の肩に手を乗せて、
「笑えよ、シュウ。」
と、弱りながらも、笑顔で言った。
「そろそろだぞ、シュウ主催の、脱出旅行記念!」
ダイスケが言って、みんな飛び切りの笑顔をカメラに向ける。
パシャッっと小さい音がして、フラッシュが焚かれた。
撮り終わった後、俺とコウ以外の三人はカメラへと駆けていった。
「そういえば、現像しないと写真みれないじゃん。」
「いいじゃないか。こういうのは、撮るっていう行為自体が大切なんだよ。」
「……うん。そうだよ。」
「そっか。そうだよね。」
みんながわいわい騒いでいる中、コウはそっと俺に、
「アヤを頼んだ。」と言った。
俺が何か言おうと思ったときには、もうみんなの輪に入って別れの言葉を述べていた。
コウは最後に、「本当に、我侭言ってごめん。」と、深く頭を下げた後、一人で夕暮れの道を歩いていった。
その姿が見えなくなるまで、無言で見つめた後、俺達はとりあえず車へ戻ろうとする。
そんなとき、アヤが言った。
「……マコは、いいの?」
急なアヤの問いかけに、マコは少しビクッとなる。
「夢、だったんでしょう?」
アヤが、マコの顔を少し寂しいような顔で見つめる。
沈黙の間、マコは複雑な表情をしていた。

マコが、少しアヤと話がしたいと言ったので、先に車の近くで待つことにする。
遠くで、何やら話をしているのは分かるが、内容は聞き取れない。
長時間の運転で疲れた身体をマッサージしていると、横からダイスケが急に聞いてきた。
「シュウ、アヤのこと、好きか?」
いきなりの質問に吹き出しそうになったけれど、ダイスケの顔は真剣だった。
俺も、真剣に答える。
「…ああ。好きだよ。自分でも、びっくりするぐらいに。
こんな計画、普通人間だった俺が、よくやってるなと思うよ。」
「……そうか。
俺は、マコが好きだ。」
「分かってるよ、なにを今さら。」
「俺は、お前の男らしさが羨ましかった。」
…何を言ってるんだ?俺なんかよりダイスケはずっと頼りになるし、面倒見もいい。
(というかそれ以前に、会話が噛み合ってないんですが…)
「出発を決意したときの、お前の言葉だよ。
 あんなこと、余程相手のことを想っていないと、なかなか言えることじゃない。
 勇気も、いるしな。
 …シュウ、俺は最期に、マコの前でカッコつけてやりたいと、そう思ってんだよ。」
つらつらと、ダイスケが言う。
俺はとびとびのダイスケの話に、ずっとハテナのままだったけれど、ダイスケの訴えは理解していた。
「二人には悪いけど、俺達も憧れていた所があるんだ。
 俺は、マコをそこに連れて行ってやりたい。
 シュウと同じ気持ちなんだよ。
 あいつを、少しでも笑顔にしてやりたい。」
笑顔のまま語るダイスケの顔。
輝いて見えるその顔には、たくさんの汗をかいていた。
我慢、しているのだろう。
ダイスケの身体のどこかが、悲鳴をあげているのは簡単にわかった。
「そっか。それじゃ、もうお別れだな…。」
「……まあな。
 …。アヤの前で、そんな顔すんじゃねえぞ。
 お前は十分カッコいいんだから、最期ぐらい、きっちり決めろ。」
笑顔のまま、ダイスケが俺に言う。
(決めるって、なにをだよ…)
そう思いながらも、変な想像をして顔を赤らめる俺に、ダイスケは続ける。
「お前は、本当にすごいやつだよ。
 あの病棟から、俺達を連れ出してくれた。
 死ぬ前に、シュウみたいなやつに会えて、本当によかった。
 感謝してる。」
『死』という言葉を口に出したダイスケの姿に、余りにも儚い、残された時間を感じる。
涙が出てきそうだったけれど、堪えて、俺も言う。
「俺も、ダイスケみたいなやつに会えてよかった。
 こんなに仲良くなれる人がいるんだって、びっくりしたよ。
感謝してる。
ダイスケにも、マコにも、コウにも、アヤにも。
最高の仲間達だよ。」
言い終える頃には、やっぱり涙が一筋頬を伝ったけれど、俺は顔を崩さずに、ダイスケを見つめる。
ダイスケがヘッと小さく笑ったので、俺も小さく笑い返す。
最後にお互いの拳をゴンッと合せて、約束した。
「絶対に、アヤにカモメを見せてやれよ。」
「もちろんだ。そっちこそ、マコを幸せにしてやれよ。
 マコは笑顔が一番だ。」
「ヘッ。いい顔してんじゃねえの、シュウ。
 なら、勝負な。
 惚れた女をどれだけ幸せにできるか、勝負だ。」
「…ヘッ。望むところじゃねえの。」
ダイスケに比べて、アヤに気持ちも伝えていない俺。
だけど、俺は力強く言い切った。
これからはもう迷わないという、決意の表れだった。


俺とダイスケが話し終えた頃、ちょうどアヤとマコも戻ってきた。
二人とも、ほんのり目が赤くなっている。
この二人は、同姓だけあって普段から一緒だったし、俺達には言いにくいことも相談し合っていたのだろう。
姉妹のような関係だけに、別れはとても寂しいようだった。
けれど、二人とも涙を溜めながらも笑っていた。
クスクス笑う度に、小さな涙が一粒こぼれて。
これから夢を叶えにいくのだから、悲しい別れのはずがなかった。

車を離れていくとき、ダイスケは見せ付けるようにマコの手をギュッと握っていた。
マコは照れながらも、こちらを向いて、名残惜しそうに手を振っていた。
先程のコウと同様に、二人は荷物を持っていかなかった。
もう、必要はないのだと分かっているからだ。
アヤと二人で見送った後、少し沈黙が流れる。
「二人きりに、なっちゃったな。」
そっと、俺が言う。
「……うん。」
「…寂しい?」
「……うん。
 …でも、シュウがいるから、大丈夫。」
そう言って、俺に笑顔を向けてくれる。
(守るんだ、俺が。)
もう、頼りになる仲間は、それぞれの道を行った。
俺達は、海を目指して進むだけだ。

とりあえず車内に戻って、一通り荷物だけは見ておく。
残りの時間を考えると、必要性を感じるものは、やはりなかった。
差したままのキーを引き抜き、元々あったボックスの中へ返す。
外へ出て伸びをして、アヤの準備が終わるのを待つ。
少しして、アヤが車から出てきた。
けれど、なにやら後部座席をジッと見ているので、気になって近づく。
後部座席には、旅の間もほとんど抱いていたウサギのぬいぐるみが、穏やかな夕焼けに染められながら座っていた。
「置いてく、のか?」
俺が聞くと、アヤはゆっくり頷いた。
それは、別れの決意なのか、ここへ戻ってくる決意なのかは分からなかったけれど、俺は何故かアヤの頭を撫でていた。
また子供扱いされていると思ったのか、アヤが頬を膨らませたけれど、俺はそれに笑顔で返す。
アヤは最後に、ぬいぐるみのおでこにそっとキスをして、車のドアを閉めた。
「行こ」
そう言って先に歩き出すアヤ。
俺はその小さな背中にすぐに追いついて、横に並んで歩き始める。
旅は、終わりに近づいていた。


いつもよりは少し静かだけど、変わらない調子で言葉を交わす。
やはり音楽の趣味が合うので、自然と二人でお気に入りの曲を小さく口ずさんだりもした。
海に近いこの辺りは観光地なのか、旅館やホテルが目に付く。
そんな建物の駐車場に、変わった開き方のドアをつけた車を見つける。
「あれ、すごいだろう?」
「…変な開き方するんだね。あのドア。」
「あの姿、なにかに似ていると思わない?」
「うーん…、何?」
「片側だけじゃ分かりにくいかな。
あれ、上に両ドアが開いた状態がカモメの姿に似ているから、ガルウィングドアって言うんだ。
もうカモメ見ちゃった感じしない?」
教習所のときに聞いた豆知識を、急に思い出して披露する。
「…カモメはあんなのじゃないよ。」
「…鉄のカモメじゃ、お気に召さなかったでしょうか。」
俺がふざけると、
「…ふふ。シュウも、物知りなんだね。」
たしなめる代わりに、笑いかけてくれた。
他愛もない、会話。
けれど、俺はこうしてアヤに届ける一言一言を、噛み締めながら話した。
暗くなっていく外の世界を、アヤと二人で歩く。
少し前までは考えられないことだったけれど、ここまでアヤを連れてこられたことを、俺は少しぐらい誇ってもいいのだろう。
あと、少し。
自分の心に再び、気合を入れる。
急にみんなの笑顔が頭に浮かんで、少し暖かく感じる。
二人きりだったけれど、あの五人でいたときの居心地の良さは、ずっと俺の胸に残っているようだった。


ほとんど夜といえる時間だろう。
周りの家屋には明かりが灯っている。
海に近づくにつれて、その家屋も少なくなってくる。
ここまでくると、細かい地理はわからないとコウは言っていた。
けれど、もうすぐ見えるはずの河を辿れば、すぐに着くだろう。
俺は、少し不安を抱きながらも、足を進める。
先ほどから広がってきた、体全体の倦怠感が、無視できなかったからだ。
アヤとの会話も、少なくなっていた。
俺が苦し紛れに曲を口ずさむと、少し落ち着いた空気が流れたようにも思えた。

どんどん、闇が深くなってくる。
これは、今日中には到着できないかなと感じたとき、隣にいるアヤの呼吸が乱れた気がした。
マコのときのような深いものではなく、リズムが崩れて呼吸と呼吸の間に、ひゅっひゅっという風の音が切れるようにしていた。
「…大丈夫か、アヤ?」
返事をするのが辛いのか、強がって頷くだけで、乱れた呼吸は元に戻らない。
どこか休憩できる所を探していると、今度は大きく咳き込み始めてしまった。
焦りながらも周りを見ても、なかなか見つからない。
仕方なく、前方にある橋の下を目指して、歩きはじめる。
一歩進むごとに、アヤの咳は酷くなっていくような気がして、俺は慎重に進んだ。
橋の下に到着し、アヤを横にする。
咳は少し軽くなっても、呼吸の間に起こる風の音は鳴り止まなかった。
「…もう、充分、だよ」
苦しそうにしながらも、アヤは笑って言う。
「もう、いいよ…」
弱弱しく、笑って言う。
弱気のアヤは、珍しかった。
いつもおっとりしていて、子供みたいな一面もあるけれど、とても強い芯を持っていたから。
そんないつものアヤに呼びかけるべく、俺は声を張り上げる。
「何言ってんだよ!見に、行くんだろ?カモメ。
 ずっと、ずっと、楽しみにしてたんだろう!?
 あと、少しなんだ。あと、少しだから…!」
「…なんで、そこまで、してくれるの?
 一人の、我侭のために。
 ……私は、もう……。」
少し涙を溜めながら、未だに弱気なアヤ。
そっと目を閉じようとしたのが、俺の瞳に映って、俺は思わず叫んだ。
「……好きだから、だよ!!
 アヤのことが、好きだから…!!
 男は、好きな女の子の笑顔を見れるのが一番幸せなんだ!
 ダイスケとも、コウとも、約束…したんだ!
俺が、俺が……アヤを笑顔にするって……!!!」
頭に浮かぶまま、口から告白の言葉が溢れる。
恥じらいなんて、なかった。
恋愛に疎い俺の人間性も、関係ない。
今の俺には、アヤとカモメを見ることが全てで、アヤの笑顔が全てだから。
「だから、アヤ……!!!」
目を閉じようとしていたアヤが、そっとこちらを見つめて、
「…ありがと、シュウ。
 私も、シュウのこと、好きだよ。
 …こんな私に構ってくれて、ここまで連れてきてくれて…
 ホント、ありがと……。」
いつもよりさらにゆったりした口調で、アヤは言った。
言い終わった瞬間、アヤは目を閉じてしまう。
「……アヤ?」
恐ろしくなって、名前を呼ぶ。
「……アヤ?…アヤ!?」
胸の奥から、激流のように迫り来る不安が、俺の心臓の動きを一気に速めていく。
俺は、アヤの身体を揺すりながら、狂ったように呼ぶ。
「アヤ!…アヤ!!」
すると、余りにも声を張り上げすぎたのか、自分が咳き込んでしまう。
初めて味わう程の、激しい咳。
(俺は、アヤを守るんだ…!!
 とにかく、アヤを他の場所に……)
そのままパニックに陥りそうな心を叱咤し、俺は頭を働かす。
咳が止むのを待つが、なかなか止まらない。
急に口の中に、懐かしい味が広がった気がした。
咳が一度止んだところで、口を抑えていた手を見る。
やけに暖かく感じるその手には、真っ赤な血が、嘲笑うように付いていた。
意識が、強い力でどこかへと引っ張られていく。
視界が夜よりも暗い闇で塞がれていく中で、手首についている黒だけが、憎たらしくその存在を訴えていた。



目が、覚めた。
俺の髪を撫ぜる、優しい手。
頭の下には、とても心地良い感触。
目の前に、アヤの顔。
(これって、膝…枕?)
…一瞬、固まる。
次の瞬間、俺はガバッと身体を起こす。
急に動いたので、アヤは驚いてしまっているようだ。
謝ろうとしたけれど、ついさっきまでの状況に加えて、意識を失う前の、無我の告白が鮮明に思い出されて、顔が蒸発するのではないかと思うぐらいに火照っていた。
「……!……!」
いつかの声にならない悲鳴を、情けなく上げていると、アヤはクスッと笑いかけてきた。
「……大丈夫?」
それは、まだ口周りに血をつけている俺の体調のことだろうか。
それとも、血よりも赤く染まっている、今の俺の顔のことだろうか。
結局十分ほど会話は成り立たなかったが、やっとのことで、俺は声を出す。
「俺は大丈夫だけど…アヤは?平気、なのか?」
「…うん。一晩ゆっくり寝たら、多少良くなった。」
意識を失ってから、一晩越えていたようで、アヤの顔色も少し良くなっているように見える。
ふぅ、と安堵のため息を付く。
頭の中が半分寝ている状態で、少しの間沈黙が流れる。
「…昨日は、ごめんね。
ここまで来たのに、……弱音、吐いちゃって。」
申し訳なさそうに、アヤが言う。
「別にいいよ。今、こうしてアヤが元気なら、なんでもいい。」
半分寝ているだけあって、何も考えず口にする。
「昨日の、コトなんだけど…、その…ありがとう。」
照れながら言うアヤの姿に、昨日の台詞が浮かび上がるように、頭に再び響く。
また赤くなってしまったけれど、ダイスケと約束したときの言葉を思い出して、少しは男らしく振舞おうとする。
俺は、大きく笑みを作って立ち上がり、
「カモメ、見に行こうよ。」
と、アヤの手を引いて立ち上がらせる。
もう完全に弱ってしまっているアヤの体は、勢い余って、俺の腕に抱きつくような格好になってしまう。
少しの間、二人とも静かになって俯いていたけれど、その格好のまま、歩き出した。
海はもう、すぐそこだ。


最初は、腕にしがみつくアヤのことを意識してしまって歩きづらかったけれど、今はもう、それを気にする余裕もなくなってきていた。
十分に一度ほどの周期で来る、咳。
アヤの呼吸も昨日ほどではないにしろ、この距離だと多少の乱れが俺の耳によく届いた。
二人とも、お互いに迫る終わりを、確かに感じていた。
周りには何もなく、朝で人気もない道の中、一歩ずつ足を進める。
どれだけの時間、歩いているのか分からなかった。
けれど、繋いだ手の感覚が、これ程まで俺の心を奮い立たせてくれるとは。
ボロボロの身体でも、心だけで歩いていける。
俺は、そう思った。

いつの間にか、俺の鼻は潮の香りに慣れてしまっていたようだけれど、さらに強い潮の香りが、前方からしてくる。
俺もアヤも、それに気付いて、自然と歩を進める速度が上がる。

視界が、広がっていく…!

海、だ。
歩き続けた先に見つけた、どこまでも広がる海。
体が一気に軽くなった気がして、腹の底がくすぐったく感じる。
俺とアヤは、笑った。
目の前に広がる、俺達の終着点。
やっと、ここまで来た。
ありったけの力を振り絞って、堤防へ登る。
俺が先に登ったので、後でアヤを引っ張り上げる。
どう見たって軽いアヤの体が、弱った俺にはとても重く感じてしまう。
やっとの思いでアヤを引っ張り上げると、二人ともそのまま大の字に寝転んでしまった。

すぅっと香る潮の匂い。
どこまでも広がる、蒼、蒼、蒼。
そんな世界を飛び回る、白い鳥。
「あ、カモメ…!!」
アヤが、歓喜の声を上げる。
「やっぱり、…可愛いなぁ。」
やっぱり?アヤは前にも、カモメを見たことがあるのだろうか。
聞こうと思ったけれど、止めた。
それはずっと気になっていた、アヤがカモメを見たかった理由と、きっとイコールなのだろうけれど、それを聞くのは、アヤの過去を聞くのと同じことだろうから。
それに。
「…ありがと!シュウ!」
ここにあるアヤの笑顔さえ見られれば、俺は幸せなのだから。

しばらくの間、カモメを見上げた後、あの頃のような優しい沈黙が、俺達を包んでいた。
すると、寝転んだまま、どちらからともなく、お互い顔を近づける。
直前で目が合ってしまい、流石に顔が熱くなる。
少し戸惑いが混じりながらも、俺達はキスをした。
ほんの一瞬だったけれど、とても、とても、優しい時間だった。

終わった後にまた目が合ってしまって、再び沈黙が続いたけれど、俺達はお互いの手を握って離さなかった。

潮の流れを聞きながら、何十分かを過ごす。
寝転んで空を見上げたまま、俺は言う。
「アヤがさ、カモメ好きだって知ったとき、俺、こっそり調べてたんだぜ。
 カモメのこと。
あの時コウが思い出せなかった学名も、しっかり覚えてる。」

アヤは、何も返事をしなかった。


涙をその目に溜めながら、震える声で、俺は続ける。



「カモメ。
海の周りで生活する、人懐っこい渡り鳥。
日本産には、オオセグロカモメ、シロカモメ、ウミネコなどがいる。
学名、ラルス・カヌス。
…アヤの、夢。
…俺の、希望。」

なぜ俺の体が壊れてしまったのか、分かった気がする。


それは、神様の暇つぶしでも、友達欲しさの幽霊の悪戯でもなくて。


あの病棟で、仲間たちに出会うためだったのだ。


……そして、アヤの夢をこうして叶えてやること。
これは、ずっと前から決まっていたことなのかもしれない。


強い風が吹いて、カモメが流れるように羽ばたく。


蒼の世界を巡る、自由な渡り鳥。


このカモメ達は、俺達をどこへ連れて行ってくれるのだろう。


そんなことを思いながら、俺は、目を閉じた。


-ラルス・カヌス-  完

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2009/06/13 (Sat) ラルス・カヌス あとがき

最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございます。

さて、作中では主要登場人物全員が病気の鬼畜な小説ですが、作者本人はその方面の知識が皆無で、病名などは全くでてきません。汗
それでも、想い人が患っていて、後半にそれによって別れが近づく・・・といった展開は既に使い古されている今日において、多少のオリジナリティーは出せたかもしれません。

最終章においてシュウとアヤ以外の人物の行動が突然すぎるのが気にかかると思いますが、当時最後に限って頭が働かなくなってくるという、悲しすぎる力量の不足によるものです。

しかし、本人としては荒すぎる現状が気に入っているので、恐らくこのままです。
(もしかしたら加筆修正するかも)


誤字脱字や問題点の指摘など喜んでお受けしますので、是非感想と共にお願いいたします。
黒目でした。

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